歌舞伎町 怖い話。 歌舞伎町でキャッチのお兄さんについて行ったら怖い世界が見えた話

【怖い話】【心霊】第144話「歌舞伎町のスナック」

歌舞伎町 怖い話

「ここに、引越します」 僕がまだサラリーマンをしていたころ、とあるマンションの資料を添えて上司に提出したら「お前は何を考えてるんだ!」とめちゃくちゃ怒られた。 「なんで引越しをするだけでそんなに怒られるの?」と思う人もいるかもしれないので説明をしておくと、僕が「ここに引越したい」と、上司に向かって高らかに宣言したそのマンションは新宿歌舞伎町のど真ん中にある、通称「ヤクザマンション」。 つまりは、暴力団の事務所が多数入居しているようなマンションだったからである。 ちなみに当時働いていた会社の最寄駅は上野である。 「上野に通うのになぜ歌舞伎町に住む必要があるのか」 「会社名義でそのような場所を借りるのは問題である」 「風紀上よろしくない」 などなど、1ミリの反論も許されない正論を並べ立てられ、目の玉が飛び出るかと思うくらいに怒られた。 「お前みたいなやつが居るとそのうち会社がつぶれる」くらいのことも言われたか。 シロアリか、僕は。 「おい!誰に向かって口をきいとんや!歌舞伎町の暴れ竜とはワシのことじゃい!」「プキキキ~~~!かんにんしておくれやすぅ~~~!」泣き叫ぶ上司を抱えて、ビルの7階から投げ落とした~、みたいなことは全然なく、サラリーマンの僕が給料、ボーナスその他の査定を握っている上司に逆らえるわけがない。 「へい!おっしゃるとおりでガス!」そんなノリでその時はおとなしく諦めてを借りてそこに住むことにしたのだけど、「ヤクザマンションに住んでみたい」という夢は簡単にはついえなかった。 僕は『殺し屋1(イチ)』という、ヤクザ同士がヤクザマンションで殺し合いを繰り広げる漫画にすっかりハマっていたからである。 普段から仲良くしている友達は渋谷近辺に住んでいる人が多かったので、利便性を考えて新宿歌舞伎町ではなく、渋谷道玄坂にあるヤクザマンションに引越すことにした。 そのマンションを借りるにあたっては、など紆余曲折があったりするのだけど、最終的には3年越しの夢が叶って、過去には〇〇事件があったり、人が〇〇されたりしたようなマンションに入居することに成功するのである(詳細を書くと一発で特定されるから伏字にします)。 1K・25平米で家賃8万円と、周囲の相場に比べると格安だった。 「これで僕も今日から殺し屋1だ!」 そんな感じで意気揚々とヤクザマンションに住んだのだけど、結論から言うと拍子抜けもいいところだった。 発砲事件があるわけでもないし、抗争が起きるわけでもないし、怖い人がたむろするわけでもない。 至って普通の人たちが住んでおり、至って普通の会社の事務所なんかもたくさん入居していて、「なんだ、こんなものか」と思ったことを覚えている。 「窓からビール瓶を投げ捨てないでください」みたいな張り紙がエントランスにあったことには驚愕(きょうがく)したけど。 渋谷に引越してからというもの、やたらとテンションが高かった。 大阪のスラム街みたいなところで生まれ育った僕は「いよいよ、世界に冠たる渋谷に住んだのだぞ」という誇らしい気持ちでいっぱいだったのである。 「ひょっとして僕は帝王になったのかもしれない」と思ったりもした。 無駄にTwitterで「俺は渋谷に住んでいるのだ」ということをアピールすることも忘れなかった。 なにせ、ニュース番組で、ドラマで、バラエティ番組でしょっちゅう見ていた109が「地元の服屋」なのである。 子どものころに街でテレビカメラを見かければ「あ! テレビだ! なんの撮影だろう!?」と興味しんしんで駆け寄ったのに、渋谷に引越してからは「今日もカメラが邪魔だなぁまったく……。 ま、渋谷だからしょうがないかな?」と謎の上から目線で見下ろしていた。 飲み会に行けば聞かれもしないのに「僕、渋谷に住んでるんですけど~」と鼻高々だったし、「渋谷在住」みたいなプリントがされたTシャツを着て街を練り歩きたかったし、Twitterの名前を「渋谷に住んでいるヨッピー」に変えたかった。 大宮のキャバクラに行った時は隣に座る女性全員に「今日は渋谷から来てるんですけど~」と伝えた。 ハチ公前で記念撮影をしている、方言を操る観光客らしき団体を見ては「フン、田舎者め。 僕は渋谷に住んでいるのだぞ。 ひかえろ!」と心の中で偉そうにしていた。 「渋谷に住んだ!僕はもう立派なリア充だ!」 そんな風に有頂天になっていた僕は、調子に乗ってクラブに行ってみたりもした。 そして心が折れた。 音楽に合わせて踊り狂う人々の輪に入れず、壁にもたれかかって時折リズムを取って体を動かしてみるのだけど、「何あの動きwwwwダセえwwww」って周りの人から思われている気がしてすぐにやめ、入店から30分で店を出た。 黒服に「あいつwwwwクラブになじめないでやんのwwwwww」と思われそうなのが嫌で、急な電話がかかってきたフリをした。 なにせクラブから家までは徒歩1分である。 すぐさま部屋に戻り、カギを2重にかけ、「電車に乗ってはるばる渋谷に来る田舎者のくせに!!!!!!!僕は渋谷に住んでるんだぞ!!!!」と大声で叫びながら枕を涙で濡らした。 渋谷に住んだところで、僕の中身は何も変わってない。 所詮は大阪のスラム街育ちの豚野郎なのである。 「渋谷に住んでいるのだ」という高揚感はすぐに終わった。 調子に乗っていたのは期間にして1カ月程度である。 ヤクザマンションは拍子抜けだったし、クラブにはなじめなかった。 「渋谷に住んでる」と高らかに宣言したところで、「すごい!おしゃれ!」「最先端!」「今夜は私の109にも入居してください!」なんて誰も言わないのである。 「渋谷とか住みづらくないっスか?w」みたいにちょっと小馬鹿にされるのが関の山だ。 週末になると道端に酔いつぶれた人間がたくさん「落ちて」いた。 いわゆる脱法ドラッグが世間を賑わせていたころは、歩行者がたくさん歩いている歩道をほふく前進しながら「今からお茶買いに行くんや!」と職質のお巡りさんに絶叫する人にも出くわした。 「ピエー!」とか「キエー!」とか叫び散らしている人もたくさん見かけた気がする。 こんな話を書くと「そんなところに住みたくない」と思われそうだが、僕は渋谷に住んだことを全く後悔していない。 繁華街である「渋谷に住む」ということは、仕事をする上でも、生活をする上でも、想像以上にメリットがあったからだ。 繁華街に住むと「とにかく便利」「タクシーを使わないで済む」といった多くの利点があるけど、一番大きいのがこの「たくさん誘ってもらえる」ということだ。 これはもう圧倒的、かつ代替のきかない「良さ」である。 飲み会の場所として渋谷、新宿あたりの繁華街が選ばれやすいのは想像に難くないと思う。 別にこれは東京に限らず、大阪における難波・梅田、名古屋の栄、福岡の中州・天神なんかも同じだ。 そういう土地に住んでいると「今〇〇で飲んでるんだけど来ない?」「飲み会やってるんだけどおいでよ!」など、「やたらと人に誘われる」という圧倒的なメリットがあるのだ。 もちろんお酒の席が苦手、とかそもそも一人で居ることが好き、みたいな人にはおすすめできないけど、僕は生来の酔っぱらい気質なのでそういう席に誘ってもらえるのは純粋にうれしい。 おかげで会社という組織から離れても「孤独を感じる」みたいなことが一切なかった。 それにサラリーマンを辞めてフリーランスになった当時の僕は、当然仕事が欲しかった。 そしてライターという仕事は、飲みの席がそのまま仕事につながることが意外と多いのである。 実際、なんとなくのノリで出かけた飲み会からつながった仕事もたくさんあった。 この「人と会うためにかかるコストが異常に低い」「知り合う人の絶対数が増える」という点は、仕事の上で大いに役に立った気がする。 そもそも渋谷はIT企業なんかもたくさんあるので、そういった会社からの呼びかけにも気軽に応じられる。 ちょっと遠い場所だと「行くの面倒だから、ある程度メールで固めてから打ち合わせ行くか」みたいなノリになるのだけど、渋谷の会社からの依頼だったりすると「とりあえず話だけ聞いておくか」みたいにトントン拍子に進んだりするのだ。 会社側も何かあると「そういえばヨッピーが近くに住んでるし相談してみるか」みたいなテンションになるのかもしれない。 そんな感じでホイホイ出かけて行った打ち合わせでひどい企画をゴリ押しされ、後から「やらなきゃよかった」と後悔することも多かったのだけど。 とはいえ、女性が渋谷をはじめとした繁華街に住むことはあまりおすすめしない。 キャッチ、スカウト、ナンパ、絡んでくる酔っぱらいなんかがうっとうしいことこの上ないからである。 自炊派の人にもあんまりおすすめしない。 スーパーがないわけではないけど数が限られてるし、デパ地下で食材を買うのはやっぱり高いからだ。 そういった点に目をつむれば、フリーランスになって昼夜逆転生活を送っていた僕からすると、夜中でも開いているお店がたくさんあって買い物もできる渋谷での生活は大層居心地が良かった。 つまりは、 ・人と知り合うことが仕事につながる職業の人で ・人混みが苦にならず ・昼夜逆転生活をしている なんて人が、渋谷など繁華街に住むのは全然アリなのではなかろうか。 起業したての人や気ままなフリーランス商売をしている人には特におすすめだ。 その上で僕が渋谷に住んでいたころによく通い、個人的な思い入れの深い場所について記しておきたい。 まずはこちらのボードゲームカフェだ。 最初はイベント会場を探していて、ここの店主の人が「ウチ使っていいですよ」みたいなことを言ってくれたのがきっかけだったような気がする。 とにかくボードゲームが楽しくて楽しくて、渋谷に来た友達に「あんさん、実はエエ店がありまんのや……!」「ゴクリ……! それはどんなお店でっしゃろかい……」みたいな茶番を挟んではせっせと連れて行った。 そしてこの店に通いまくったせいで気付いたら週1で店番までするようになった。 店番とはいえ、たまに飲み物を出すくらいで基本的にはお客さんに交じって遊んでいるだけだったので、サラリーマンを辞めて貧乏暮らしを開始した僕からすると、チョロいお小遣い稼ぎだった。 「ボードゲームやるよ~~~!」と道端で叫ぶと、一部の熱狂的なオタクが狂喜乱舞してヨダレを垂らしながら走ってくる、と相場が決まっているのだけど、それ以外の人にボードゲームがどういうゲームかを説明するときには、「人生ゲーム」を想像してもらうとイメージしやすい。 あんな感じで決まったルールにのっとってゲームを進め、特定の条件を満たすことで勝敗が決まる。 ただし、人生ゲームほど運任せではなく、戦略や駆け引きなんかが大きく作用するゲームのほうが人気が高い。 要するにボードゲームは頭を使う遊びである。 流行っている「人狼」なんかもボードゲームの一種だ。 ボードゲームは「紳士的に遊ぼう」というのが推奨されていて、あくまで紳士的な振る舞いをしながらゲームを進めることが求められるのだけど、気心が知れた仲間と興じるときはそのルールを取っ払い、死ぬほどあおりまくって遊ぶのが楽しかった。 「カタンで負ける奴は人生ごと負けてる」「お前ごとき、幼稚園児がアンパンマン見ながらやっても勝てる」「お前みたいなやつに遊ばれるゲームがかわいそう」などなど。 くれぐれもリアルファイトに発展しないように注意しよう。 そして他のお客さんが居る場合に非紳士的な言動を取るのも厳禁である。 じゃあ最初からやるなよっていう話ではあるのだけど。 続いて、回転寿司の「すし台所家」である。 本当に、マジで、死ぬほど、足しげく、狂ったように、圧倒的な勢いで、通った。 最低でも2日に1回は行ってたと思う。 台所家は回転寿司とはいえ一品ものの品ぞろえが良く、おいしいし値段もお手ごろなので居酒屋代わりに使うことが多かった。 ただしランチの時間帯は死ぬほど混むので注意してほしい。 おすすめは、人が少なく品切れも多くない18時ごろだ。 僕が好きなのは寒ブリとイカの天ぷらだった。 特にイカの天ぷらは確か500円くらいで想像を絶する量が出てくる。 ちゃんと季節のメニューも取りそろえていて、冬になると「生牡蠣」の寿司が出るので牡蠣のシーズンは生牡蠣目当てにほぼ毎日、くらいのレベルで通っていた。 ちなみに、取材で行った金沢の醤油が大変おいしかったので、「マイ醤油」を持って食べに行っていたのだけど、座席に座るなりポケットから醤油を取り出して小皿に注ぐ僕を見て、大将が毎回変な顔をしていた。 台所家に続いておすすめしたいのが、この「一軒め酒場」である。 会社を辞めたてで節約したい、でも飲み会には出たい、みたいな僕のワガママをかなえてくれたのがこのお店である。 「一軒め酒場」は別に渋谷以外にもたくさん店舗があるので、渋谷名物でもなんでもないのだけど、とにかく常軌を逸した価格でお酒が飲める。 お通しは最初から出て来ない。 酎ハイ、サワーは190円だし、オツマミの類いもだいたい200円くらいで食べられるので1人2,000円もあれば「もう飲めるか!」ってブチ切れる程度には痛飲できる。 道玄坂に酔っ払いが増えたのはこの「一軒め酒場」の功績によるところが大きい。 嘘だけど。 「爆ハイ」というメニューがあって、「ウイスキーのビール割」という狂気じみたお酒なのだけど、かけつけ一杯、で頼むと一気にベッロベロに酔えるので大変コスパがいい飲み物である。 「一軒め酒場」は貧乏暮らしのフリーランスを支える、立派な福祉施設と呼んでも過言ではない。 そして最後に、僕が足しげく通っていた銭湯をご紹介しておきたい。 渋谷から1駅離れるが、池尻大橋の「文化浴泉」だ。 いわゆるデザイナーズ銭湯で雰囲気がおしゃれだし、浴槽もきれいなのでおすすめしたい。 軟水なので、お風呂上がりに髪がキシキシしないこともポイントが高い。 渋谷から歩いて行くとちょっと大変かもしれないけど、自転車を使えば割とすぐに行けるので、渋谷に住む機会があればガシガシ利用していただきたいものである。 ただし、一定の条件をクリアした人にとっては暮らしの拠点として、仕事の拠点として繁華街で暮らすことのメリットは確実にある。 人生に一度くらいはこういう雑多な街に住んでみるのもおもしろいんじゃないかと思うのですが、皆さんはどうでしょうか。

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人から聞いた怖い話 巨頭老人

歌舞伎町 怖い話

「ここに、引越します」 僕がまだサラリーマンをしていたころ、とあるマンションの資料を添えて上司に提出したら「お前は何を考えてるんだ!」とめちゃくちゃ怒られた。 「なんで引越しをするだけでそんなに怒られるの?」と思う人もいるかもしれないので説明をしておくと、僕が「ここに引越したい」と、上司に向かって高らかに宣言したそのマンションは新宿歌舞伎町のど真ん中にある、通称「ヤクザマンション」。 つまりは、暴力団の事務所が多数入居しているようなマンションだったからである。 ちなみに当時働いていた会社の最寄駅は上野である。 「上野に通うのになぜ歌舞伎町に住む必要があるのか」 「会社名義でそのような場所を借りるのは問題である」 「風紀上よろしくない」 などなど、1ミリの反論も許されない正論を並べ立てられ、目の玉が飛び出るかと思うくらいに怒られた。 「お前みたいなやつが居るとそのうち会社がつぶれる」くらいのことも言われたか。 シロアリか、僕は。 「おい!誰に向かって口をきいとんや!歌舞伎町の暴れ竜とはワシのことじゃい!」「プキキキ~~~!かんにんしておくれやすぅ~~~!」泣き叫ぶ上司を抱えて、ビルの7階から投げ落とした~、みたいなことは全然なく、サラリーマンの僕が給料、ボーナスその他の査定を握っている上司に逆らえるわけがない。 「へい!おっしゃるとおりでガス!」そんなノリでその時はおとなしく諦めてを借りてそこに住むことにしたのだけど、「ヤクザマンションに住んでみたい」という夢は簡単にはついえなかった。 僕は『殺し屋1(イチ)』という、ヤクザ同士がヤクザマンションで殺し合いを繰り広げる漫画にすっかりハマっていたからである。 普段から仲良くしている友達は渋谷近辺に住んでいる人が多かったので、利便性を考えて新宿歌舞伎町ではなく、渋谷道玄坂にあるヤクザマンションに引越すことにした。 そのマンションを借りるにあたっては、など紆余曲折があったりするのだけど、最終的には3年越しの夢が叶って、過去には〇〇事件があったり、人が〇〇されたりしたようなマンションに入居することに成功するのである(詳細を書くと一発で特定されるから伏字にします)。 1K・25平米で家賃8万円と、周囲の相場に比べると格安だった。 「これで僕も今日から殺し屋1だ!」 そんな感じで意気揚々とヤクザマンションに住んだのだけど、結論から言うと拍子抜けもいいところだった。 発砲事件があるわけでもないし、抗争が起きるわけでもないし、怖い人がたむろするわけでもない。 至って普通の人たちが住んでおり、至って普通の会社の事務所なんかもたくさん入居していて、「なんだ、こんなものか」と思ったことを覚えている。 「窓からビール瓶を投げ捨てないでください」みたいな張り紙がエントランスにあったことには驚愕(きょうがく)したけど。 渋谷に引越してからというもの、やたらとテンションが高かった。 大阪のスラム街みたいなところで生まれ育った僕は「いよいよ、世界に冠たる渋谷に住んだのだぞ」という誇らしい気持ちでいっぱいだったのである。 「ひょっとして僕は帝王になったのかもしれない」と思ったりもした。 無駄にTwitterで「俺は渋谷に住んでいるのだ」ということをアピールすることも忘れなかった。 なにせ、ニュース番組で、ドラマで、バラエティ番組でしょっちゅう見ていた109が「地元の服屋」なのである。 子どものころに街でテレビカメラを見かければ「あ! テレビだ! なんの撮影だろう!?」と興味しんしんで駆け寄ったのに、渋谷に引越してからは「今日もカメラが邪魔だなぁまったく……。 ま、渋谷だからしょうがないかな?」と謎の上から目線で見下ろしていた。 飲み会に行けば聞かれもしないのに「僕、渋谷に住んでるんですけど~」と鼻高々だったし、「渋谷在住」みたいなプリントがされたTシャツを着て街を練り歩きたかったし、Twitterの名前を「渋谷に住んでいるヨッピー」に変えたかった。 大宮のキャバクラに行った時は隣に座る女性全員に「今日は渋谷から来てるんですけど~」と伝えた。 ハチ公前で記念撮影をしている、方言を操る観光客らしき団体を見ては「フン、田舎者め。 僕は渋谷に住んでいるのだぞ。 ひかえろ!」と心の中で偉そうにしていた。 「渋谷に住んだ!僕はもう立派なリア充だ!」 そんな風に有頂天になっていた僕は、調子に乗ってクラブに行ってみたりもした。 そして心が折れた。 音楽に合わせて踊り狂う人々の輪に入れず、壁にもたれかかって時折リズムを取って体を動かしてみるのだけど、「何あの動きwwwwダセえwwww」って周りの人から思われている気がしてすぐにやめ、入店から30分で店を出た。 黒服に「あいつwwwwクラブになじめないでやんのwwwwww」と思われそうなのが嫌で、急な電話がかかってきたフリをした。 なにせクラブから家までは徒歩1分である。 すぐさま部屋に戻り、カギを2重にかけ、「電車に乗ってはるばる渋谷に来る田舎者のくせに!!!!!!!僕は渋谷に住んでるんだぞ!!!!」と大声で叫びながら枕を涙で濡らした。 渋谷に住んだところで、僕の中身は何も変わってない。 所詮は大阪のスラム街育ちの豚野郎なのである。 「渋谷に住んでいるのだ」という高揚感はすぐに終わった。 調子に乗っていたのは期間にして1カ月程度である。 ヤクザマンションは拍子抜けだったし、クラブにはなじめなかった。 「渋谷に住んでる」と高らかに宣言したところで、「すごい!おしゃれ!」「最先端!」「今夜は私の109にも入居してください!」なんて誰も言わないのである。 「渋谷とか住みづらくないっスか?w」みたいにちょっと小馬鹿にされるのが関の山だ。 週末になると道端に酔いつぶれた人間がたくさん「落ちて」いた。 いわゆる脱法ドラッグが世間を賑わせていたころは、歩行者がたくさん歩いている歩道をほふく前進しながら「今からお茶買いに行くんや!」と職質のお巡りさんに絶叫する人にも出くわした。 「ピエー!」とか「キエー!」とか叫び散らしている人もたくさん見かけた気がする。 こんな話を書くと「そんなところに住みたくない」と思われそうだが、僕は渋谷に住んだことを全く後悔していない。 繁華街である「渋谷に住む」ということは、仕事をする上でも、生活をする上でも、想像以上にメリットがあったからだ。 繁華街に住むと「とにかく便利」「タクシーを使わないで済む」といった多くの利点があるけど、一番大きいのがこの「たくさん誘ってもらえる」ということだ。 これはもう圧倒的、かつ代替のきかない「良さ」である。 飲み会の場所として渋谷、新宿あたりの繁華街が選ばれやすいのは想像に難くないと思う。 別にこれは東京に限らず、大阪における難波・梅田、名古屋の栄、福岡の中州・天神なんかも同じだ。 そういう土地に住んでいると「今〇〇で飲んでるんだけど来ない?」「飲み会やってるんだけどおいでよ!」など、「やたらと人に誘われる」という圧倒的なメリットがあるのだ。 もちろんお酒の席が苦手、とかそもそも一人で居ることが好き、みたいな人にはおすすめできないけど、僕は生来の酔っぱらい気質なのでそういう席に誘ってもらえるのは純粋にうれしい。 おかげで会社という組織から離れても「孤独を感じる」みたいなことが一切なかった。 それにサラリーマンを辞めてフリーランスになった当時の僕は、当然仕事が欲しかった。 そしてライターという仕事は、飲みの席がそのまま仕事につながることが意外と多いのである。 実際、なんとなくのノリで出かけた飲み会からつながった仕事もたくさんあった。 この「人と会うためにかかるコストが異常に低い」「知り合う人の絶対数が増える」という点は、仕事の上で大いに役に立った気がする。 そもそも渋谷はIT企業なんかもたくさんあるので、そういった会社からの呼びかけにも気軽に応じられる。 ちょっと遠い場所だと「行くの面倒だから、ある程度メールで固めてから打ち合わせ行くか」みたいなノリになるのだけど、渋谷の会社からの依頼だったりすると「とりあえず話だけ聞いておくか」みたいにトントン拍子に進んだりするのだ。 会社側も何かあると「そういえばヨッピーが近くに住んでるし相談してみるか」みたいなテンションになるのかもしれない。 そんな感じでホイホイ出かけて行った打ち合わせでひどい企画をゴリ押しされ、後から「やらなきゃよかった」と後悔することも多かったのだけど。 とはいえ、女性が渋谷をはじめとした繁華街に住むことはあまりおすすめしない。 キャッチ、スカウト、ナンパ、絡んでくる酔っぱらいなんかがうっとうしいことこの上ないからである。 自炊派の人にもあんまりおすすめしない。 スーパーがないわけではないけど数が限られてるし、デパ地下で食材を買うのはやっぱり高いからだ。 そういった点に目をつむれば、フリーランスになって昼夜逆転生活を送っていた僕からすると、夜中でも開いているお店がたくさんあって買い物もできる渋谷での生活は大層居心地が良かった。 つまりは、 ・人と知り合うことが仕事につながる職業の人で ・人混みが苦にならず ・昼夜逆転生活をしている なんて人が、渋谷など繁華街に住むのは全然アリなのではなかろうか。 起業したての人や気ままなフリーランス商売をしている人には特におすすめだ。 その上で僕が渋谷に住んでいたころによく通い、個人的な思い入れの深い場所について記しておきたい。 まずはこちらのボードゲームカフェだ。 最初はイベント会場を探していて、ここの店主の人が「ウチ使っていいですよ」みたいなことを言ってくれたのがきっかけだったような気がする。 とにかくボードゲームが楽しくて楽しくて、渋谷に来た友達に「あんさん、実はエエ店がありまんのや……!」「ゴクリ……! それはどんなお店でっしゃろかい……」みたいな茶番を挟んではせっせと連れて行った。 そしてこの店に通いまくったせいで気付いたら週1で店番までするようになった。 店番とはいえ、たまに飲み物を出すくらいで基本的にはお客さんに交じって遊んでいるだけだったので、サラリーマンを辞めて貧乏暮らしを開始した僕からすると、チョロいお小遣い稼ぎだった。 「ボードゲームやるよ~~~!」と道端で叫ぶと、一部の熱狂的なオタクが狂喜乱舞してヨダレを垂らしながら走ってくる、と相場が決まっているのだけど、それ以外の人にボードゲームがどういうゲームかを説明するときには、「人生ゲーム」を想像してもらうとイメージしやすい。 あんな感じで決まったルールにのっとってゲームを進め、特定の条件を満たすことで勝敗が決まる。 ただし、人生ゲームほど運任せではなく、戦略や駆け引きなんかが大きく作用するゲームのほうが人気が高い。 要するにボードゲームは頭を使う遊びである。 流行っている「人狼」なんかもボードゲームの一種だ。 ボードゲームは「紳士的に遊ぼう」というのが推奨されていて、あくまで紳士的な振る舞いをしながらゲームを進めることが求められるのだけど、気心が知れた仲間と興じるときはそのルールを取っ払い、死ぬほどあおりまくって遊ぶのが楽しかった。 「カタンで負ける奴は人生ごと負けてる」「お前ごとき、幼稚園児がアンパンマン見ながらやっても勝てる」「お前みたいなやつに遊ばれるゲームがかわいそう」などなど。 くれぐれもリアルファイトに発展しないように注意しよう。 そして他のお客さんが居る場合に非紳士的な言動を取るのも厳禁である。 じゃあ最初からやるなよっていう話ではあるのだけど。 続いて、回転寿司の「すし台所家」である。 本当に、マジで、死ぬほど、足しげく、狂ったように、圧倒的な勢いで、通った。 最低でも2日に1回は行ってたと思う。 台所家は回転寿司とはいえ一品ものの品ぞろえが良く、おいしいし値段もお手ごろなので居酒屋代わりに使うことが多かった。 ただしランチの時間帯は死ぬほど混むので注意してほしい。 おすすめは、人が少なく品切れも多くない18時ごろだ。 僕が好きなのは寒ブリとイカの天ぷらだった。 特にイカの天ぷらは確か500円くらいで想像を絶する量が出てくる。 ちゃんと季節のメニューも取りそろえていて、冬になると「生牡蠣」の寿司が出るので牡蠣のシーズンは生牡蠣目当てにほぼ毎日、くらいのレベルで通っていた。 ちなみに、取材で行った金沢の醤油が大変おいしかったので、「マイ醤油」を持って食べに行っていたのだけど、座席に座るなりポケットから醤油を取り出して小皿に注ぐ僕を見て、大将が毎回変な顔をしていた。 台所家に続いておすすめしたいのが、この「一軒め酒場」である。 会社を辞めたてで節約したい、でも飲み会には出たい、みたいな僕のワガママをかなえてくれたのがこのお店である。 「一軒め酒場」は別に渋谷以外にもたくさん店舗があるので、渋谷名物でもなんでもないのだけど、とにかく常軌を逸した価格でお酒が飲める。 お通しは最初から出て来ない。 酎ハイ、サワーは190円だし、オツマミの類いもだいたい200円くらいで食べられるので1人2,000円もあれば「もう飲めるか!」ってブチ切れる程度には痛飲できる。 道玄坂に酔っ払いが増えたのはこの「一軒め酒場」の功績によるところが大きい。 嘘だけど。 「爆ハイ」というメニューがあって、「ウイスキーのビール割」という狂気じみたお酒なのだけど、かけつけ一杯、で頼むと一気にベッロベロに酔えるので大変コスパがいい飲み物である。 「一軒め酒場」は貧乏暮らしのフリーランスを支える、立派な福祉施設と呼んでも過言ではない。 そして最後に、僕が足しげく通っていた銭湯をご紹介しておきたい。 渋谷から1駅離れるが、池尻大橋の「文化浴泉」だ。 いわゆるデザイナーズ銭湯で雰囲気がおしゃれだし、浴槽もきれいなのでおすすめしたい。 軟水なので、お風呂上がりに髪がキシキシしないこともポイントが高い。 渋谷から歩いて行くとちょっと大変かもしれないけど、自転車を使えば割とすぐに行けるので、渋谷に住む機会があればガシガシ利用していただきたいものである。 ただし、一定の条件をクリアした人にとっては暮らしの拠点として、仕事の拠点として繁華街で暮らすことのメリットは確実にある。 人生に一度くらいはこういう雑多な街に住んでみるのもおもしろいんじゃないかと思うのですが、皆さんはどうでしょうか。

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(2ページ目)「えーーー絶対嘘でしょ」歌舞伎町の雑居ビル「R」で起きた“真夏の夜の不審火”

歌舞伎町 怖い話

歌舞伎町での話だ。 「終電の客も帰って、ひと段落ついたんだよ。 上の人が行くはずだった集金頼まれて、それの戻りだったかな」 立小便をしようと思い、駐車場の隅に向かうと座り込む女がいた。 泣いているのか両手で顔を覆っていた。 付近の店の風俗嬢だと大島は察したという。 店とのトラブルか、客とのトラブルか。 あるいは薬か。 声をかけてトラブルにでも巻き込まれたら面倒だ。 大島は無視することに決め、小便をした。 しかし視線は吸い 込まれるように女性へと向かう。 違和感があった。 暗がりに目を凝らすと、女のすぐ脇に動く存在がいた。 「なんつうか……バケモノだったね」 皺だらけのおじいちゃん。 「頭が両手広げたくらい。 それが皺だらけ。 女のじいちゃんには見えないわ。 恨んでるのかもわかんない。 いや恨んでると違うな、なんつうの、似た表情は見たことあるよ。 自分の面だ。 ボッタクリに連れていかれるリーマンを見つけた時、顔をボッコボコに腫らしたキャバの黒服見た時。 あぁこれから不幸な目に遭うんだろうなぁってちょっと楽しくなってる時の面。 いやらしく嗤ってたんだ」 老人の巨頭からは左右五本ずつ指が生えていた。 指は女に愛撫をくわえるかのように細かく蠕動していたという。 大島は呆然としながら、立小便を終えた後もしばらく眺めていた。 そして逃げるように去った。 「『あ、こっち見てる』ってわかって。 顔のサイズとあわない目の小ささだから気づかなかったんだわ」 大島は以後も、二度ほど巨頭の老人を見かけたという。 いずれも不幸そうな女の隣でいやらしく嗤っていたとのことだ。 「よく言うだろ? 歌舞伎は魑魅魍魎あふれるとこって」 油断できねんだよ、ほんと。 大島は二杯目を一気に呷った。

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