どろり幼女。 【創約 とある魔術の禁書目録】1巻 感想・レビュー この街の何処かにいるヒーローを信じて ※ネタバレあり

悪魔「血を吸わせろ」 幼女「いいよ!」

どろり幼女

新約シリーズが終わり、新たなシリーズが始まった「創約 とある魔術の禁書目録」。 「とある魔術の禁書目録」は一体いつまで続くのでしょうか。 願わくば、僕が亡くなってしまうまでにはシリーズが終わって欲しいものですw 新約の22巻やら、リバースやらの記事をすっ飛ばしてしまっていますが、読み直したらまた書くことにします。 何分、読んだのがずいぶん前のことでして…。 上条当麻サイド 本巻は、1年で最も輝かしく、眩しいイベントであるクリスマスが舞台になっています。 上条さんにもようやくクリスマスを迎え、久しぶりに幸せな1日を過ごせるかと思いきや、そうはいかず…。 というか、作中ではまだ1年も立っていないことにびっくり。 1年でどれだけ濃密な日々を過ごしてきたんだ、上条さんは…。 12月24日のクリスマスイヴ。 聖なる夜のクリスマスイヴであっても相も変わらず、上条さんは厄介ごとに関わっています。 幼女が男連中に絡まれそうな所を上条さんが見過ごせずに、匿って一緒に逃げ出しています。 この幼女は、作者はどろり幼女と呼んでいるのですが、キャラごとに特徴的な表現を度々もたせることがあって、それがキャラに個性を持たせています。 しかも、大体その表現でどんなキャラかわかるのがすごい。 新約リバースを読んでいる人ならすぐに気付いたと思いますが、このどろり幼女はリバースの最後に出てきた、あの「黄金」の創設にも関わっていたと言われる伝説の魔術師「アンナ=シュプレンゲル」です。 初っ端から上条さんと接触していますが、何が目的なのでしょう。 己の敵を見極めにきたといったところでしょうか。 どろり幼女と逃走劇を繰り広げている中で、交わされる季節の話が少し切なかったですね。 どろり幼女は春が待ち遠しいと言うのですが、上条さんには春がどんな季節なのかがわからない。 何故なら7月28日に「 竜王の殺息 ドラゴンブレス」により、夏より前の記憶を一切失ってしまったから。 今巻は新シリーズということで、キャラ紹介を兼ねてキャラごとの背景が描かれている気がしましたが、読み終わった後に考えると、今回は「記憶」もひとつのテーマとして描かれているのかなと感じました。 1年中忙しい日々を過ごしてきた上条さん。 当然ながら、学校には登校することができてはおらず、せっかくのクリスマスにも関わらず補習を受けることになります。 今更、少しぐらいの補習で挽回できるのかとは思うのですが。 そこら辺は、小萌先生がうまくやってくれているのでしょうか。 上条さんは、補習を携帯電話でビデオチャットを通してしていたのですが、突然、通信が切れ補習ができなくなってしまいます。 ホント、不幸…。 上条さんってまだスマートフォンではないのですね。 上条家の財政事情はいつも厳しい。 そんなこんなでなし崩し的に?クリスマスを過ごすことになった上条さんとインデックスは、命からがら逃げ延びてきた御坂美琴と合流し、ダーツをすることに。 美琴は輝かしいクリスマスを過ごすために、食蜂操祈を蹴落としてきました。 操祈可哀そう…。 もう逃げださないように監視されていると思うので、操祈はクリスマスでは出番なさそうなのが残念。 上条さんのピンチに土壇場で出てきそうではありますが。 最近は上条さんと美琴の絡みが多くみられて嬉しいです。 上条さんは今のところ全くといいほど浮いた話がひとつもありませんが、これからはもっとそっち方面の話も描いて欲しいです。 本当に少しずつですが距離が近づいているようには感じますし。 ダーツなんてオシャンティーなものは上条さんが知るはずもなく、インデックスについては論外。 というわけで、経験があるのか知識があるのかとにかくこの中で一番ダーツに詳しい美琴から教わりつつ、ダーツに興じる上条さんたち。 美琴は超電磁砲でコインを指ではじいているので、何となくダーツは得意なイメージがありますね。 みんなで和やかに楽しむかと思いきやそんなことにはならず。 普通にやってはつまらないということで、いろいろローカルルールを追加して対戦することになり、あの手この手で足を引っ張りあう醜い勝負になります。 経験者である美琴がトップを独走するかと思いきや、直接ダーツに関わらない部分で美琴の妨害をする上条さん。 純粋な腕比べで勝てないとみるや、あらゆる手で妨害する上条さんはさすがというかなんというか。 大人?の汚さというか、男特有の勝負への貪欲さが見え隠れしましたねw インデックスはというと、持ち前の完全記憶を活かして経験者のフォームをトレースすることでメキメキと腕前を上達させ、美琴に食らいつきます。 そこまで運動能力に関係のないダーツだからこそできる芸当ですね。 完全記憶にそんな使い方があったなんて。 そんな散々な目にあいながらも、久しぶりに余計なことも考えずにクリスマスを楽しんでいた上条さんたち。 そんな楽しい時を過ごしている最中にも確実に魔の手は迫っていました。 みんな楽しそうにしていても絶対何かが起こるんだろうなと予想してしまうのが、少し悲しい。 突然の強襲。 相手の狙いは、偶然にも合流していた打ち止め 打ち止め ラストオーダーのようで、上条さん・打ち止めと美琴達の2つに分断されてしまいます。 ここで、美琴達と合流するか二手に分かれて行動するかの二択があったわけですが、上条さんは後者を選びます。 この選択も夏ごろの上条さんでは取れない選択肢ではないでしょうか。 美琴やインデックスを信頼しているからこそ取れる選択肢。 取れる選択肢が増えたことで、上条さんの戦略もさらに広がったように感じますね。 敵はビルから自分たちを見張っていると踏みビルに向かっていた上条さんでしたが、その推理はずれてしまい、脇腹にナイフを刺されてしまいます。 そのまま、打ち止めも連れ去れてしまいました。 敵はケーキ屋さんのアルバイトに扮して、地上からじっと上条さんを監視していたのです。 クリスマスということでミニスカートのサンタクロースに扮していたのですが、一番目立つ格好だからこそ、上条さんからの注意から外れてしまったわけですね。 こんな目立つ格好をしているわけがない、クリスマスだからそんな格好でも不思議ではないという先入観から見逃していしまったのでしょう。 そんな上条さんの窮地を助けてくれたのが御坂妹。 脇腹にナイフが突き刺さっている上条さんの手当てをしてくれます。 その手当の方法がまあ痛そうなこと痛そうなこと。 なんせ自分でナイフを抜き、麻酔なしで傷口を塗っているわけですから。 想像するだけこっちまで痛くなってしまいます。 上条さんでなければ痛みで失神してそうです。 今回の敵は「舞殿星美」と呼ばれる少女。 能力は超能力としては一般的によくしられる 念動能力 テレキネシス。 ただし、念動能力としての能力が高く、レベル5ともやりあえるほどの力を持っています。 その力に自信があるのか 「たとえ七人しかいない超能力者であったとしても、殺してしまって構わないと」と言っているのですが、あのキャラのセリフがふと頭に浮かんでしまって、フラグにしか聞こえませんでしたw 上条さんの選択が功を奏して、上条さんが手当てを受けている中であっても美琴&インデックスが舞殿を追跡することができていました。 舞殿と対峙した美琴でしたが、先の言葉通り舞殿は美琴相手にも引けを取らず、むしろこの場においては上回るほどでした。 美琴を退けこのまま逃げられるかと思いきや、今度は手当てが完了した上条さんが舞殿の前に立ちはだかります。 リベンジ戦の開幕。 しかし、すでに満身創痍であり、いつ倒れてもおかしくない状態。 そんな不利な状況であっても、上条さんは絶対に引きません。 上条さんの強さは何度やられようが絶対に立ち上がるこの精神力。 いつ見ても思いますが、常人であれば確実にリタイアしていますよね。 やっぱり、上条さんもそこら辺の人とは違うものを持っている気がします。 まともに身体を動かして闘うことができないのであれば、あとはもう精神的に相手を揺さぶって、隙をつくるしかありません。 相手の手の内がわかっているかのように話すことで場を制する。 話術サイドであれば、上条さんは最強格ですからね。 話術で相手を揺さぶり、何とか舞殿に食らいついていく上条さん。 しかし、その努力も空しく、舞殿から手痛い反撃を食らってしまいます。 もう戦いは終わったと思い、雇い主に状況報告をする舞殿。 今までの鬱憤が溜まっていたのか自分の受けた仕打ちについて、怒りをあらわにします。 そんな誰にも聞かれてたくない話を、生き残っていた上条さんが聞いていました。 聞かれたくない話を聞かれてしまった上に、あの絶望的な状況で生き残っていたことに理解が追いついていない舞殿。 これによって、上条さんが完璧に精神的に優位に立つことができました。 強力な念動力を扱うことができるにも関わらず、なぜレベル4に納まっているのか。 それは、破壊力に特化した能力であり、他に応用が効きにくいからです。 だから、美琴の能力と比べるとどうしても劣っているように見えてしまう。 そんな能力なんて羨ましくなんかないと、上条さんは揺さぶります。 その揺さぶりが応えたのか、ついに舞殿が胸の内を明かします。 舞殿のその強力な能力の裏には、辛い過去がありました。 強力な能力を行使するための脳のリソースを確保するために、大切な記憶をそぎ落とされていたのです。 記憶と一口に言っても、エピソード記憶や意味記憶など様々な種類があります。 舞殿が失ったのは手続き記憶。 手続き記憶は、自転車の乗り方や楽器の演奏などの技術や習慣の類の記憶のことです。 この手続き記憶のおかげでいちいち手順や方法を意識しなくとも、自転車に乗れたり、箸を持つことができるのです。 手続き記憶を失ってしまった舞殿には、そんな 「当たり前」ができなくなってしまいました。 箸が持てなくなったり、九九がわからなくなったり。 それが、幼稚園児や小学生であればまだ普通ですが、舞殿はもう思春期の少女。 今までの日常が壊れるのが怖くて、とても周りには相談することができない。 同じような人がいれば受け入れてくれたかもしれませんが、そんな人は今までいるわけもありませんでした。 でも、ここには舞殿と同じように「記憶」を失った人がいました。 夏よりも前の記憶を失っている上条さんです。 上条さんの失った記憶は「エピソード記憶」。 その人が体験したこと、いわゆる 「思い出」と呼ばれる部分を上条さんは失っていました。 当たり前のことができなくなることと、今までのかけがえのないものを思い出すこと、どちらが辛く苦しいことなのでしょうか。 一概にどちらが辛かったとは言えないですが、それでも上条さんは舞殿のようにこんな風にした誰かを恨んだり憎んだりして、道を踏み外したりはしませんでした。 酷いことをされたのだから何をしたっていいという免罪符がありながら。 だって、そんな酷いことをするような自分にはなりたくなかったから。 それだけが、それこそが上条さんと舞殿の決定的な違いでした。 そんな風に舞殿も考えて動けることができていれば、変わっていたかもしれません。 まぁ、上条さんみたいな考え方で行動するのって、結構難しいことなんですけど。 気持ちとしては、恨んじゃう方が楽でしょう。 長年の恨みつらみに暫て変わることができない舞殿に、上条さんはあのセリフを言ってやるわけです。 「そんなくそったれの幻想は、ここで欠片も残さずぶち殺してやる」。 やっぱり、「とある」といえばこのセリフ。 何度聞いてもしびれちゃいますね。 互いに言葉を尽くし、底が知れたところで最後の激突。 舞殿の猛攻をものともせず、上条さんは突き進む。 この場面で迷いなく、突っ込めるのが上条さんのすごいところ。 俺は絶対にお前のことを見捨てない、と言って上条さん十八番の男女平等パンチを繰り出し、何とか舞殿を倒します。 これで舞殿が少しでも変わることができればいいのですか。 ここまでずっと舞殿の話でしたが、舞殿はあくまでも今回の事件の黒幕の手先。 本丸を叩かなければ、この先も打ち止めは狙われ続けてしまいます。 舞殿の持っていたスマートフォンから、統括理事長の一人である根丘則斗が今回の事件の黒幕であることがわかりました。 早速、上条さんと美琴さんは根丘の元に向かいます。 正直、統括理事長の元にたどり着きさえすれば、簡単に勝てるだろうと思っていました。 統括理事長自身の戦闘力は低い人が多いですからね。 しかし、その予想は外れました。 美琴の超電磁砲が根丘の手によって防がれたのです。 こんな芸当、並みの人であればできるはずもありません。 根元が何かをする前に何か呪文的なものを呟いていました。 おや、まさか?と思っていたら、やはりそうでした。 根元は、科学サイドの人でありながら魔術を使用していたのです。 今までの「とある」ではありえないこでした。 これが、科学と魔術が混在する世界。 もう誰が魔術を使ってもおかしくない状況になってしまったということでしょうか。 それにしても、上条さんは魔術だと気づくのに時間がかかりすぎなような気がしましたけどねw 今まで散々、魔術に触れてきているのですから、もう少し早く気付いてもいいんじゃないかと。 科学サイドの人が魔術を使うわけがない、という先入観のせいで気付かなかったかもしれませんね。 R&Cオカルティクス。 魔術専門門の巨大IT。 いやー、魔術もIT化する時代になったんですねぇ(白目)。 魔術みたいに本来陰でひっそりと使うのが普通だったものが、当たり前のように公に使われるようになるのは、何とも言えない恐怖を感じますね。 今やだれでも簡単に魔術の知識を身に着け、扱えるようになってしまった時代。 根丘は戦闘力の底上げの手っ取り早い手段として、魔術を使用していました。 まさかの魔術の攻撃により、窮地に立たせられた上条さん達。 このまま押し切られてしまうかと思ったその時。 ようやく、上条さんは彼女の名前を叫びます。 オティヌス。 元魔神であり、北欧の神。 今は上条さんの肩に乗るほど小さくなってしまいましたが、専門分野が戦争である彼女にとっては、その知識だけで充分戦闘に役立つことができます。 挿絵でも満を持しての登場ということで、ドヤ顔で仁王立ちしていますw というか、ホントに出てくるの遅いよ!読んでいる途中でいつになったらオティヌス出てくるのかとずっと気になっていました。 もしかしたら何かの事情でいなくなってしまったのではないかと、気が気ではなかったです。 オティヌスの豊富な知識により、いとも簡単に根元の魔術の種が明かされてしまいます。 元々、根元の魔術はネットに転がっている知識を使えば使用できる、付け焼き刃の魔術。 オティヌスから見れば、鼻で笑ってしまうほど程度の低い魔術だったでしょう。 根元の手癖から彼が元レスキューであったことを見抜いたオティヌス。 彼は元々は、市民を助けるヒーローだったのです。 彼も現役時代には多くの人を助けてきたのですが、助けた人々が幸せになることはなかった。 助けた人たちは好奇の目にさらされ、負うべき必要のない責任を負わされて。 そんな人たちが拠り所となる居場所が必要だった。 それが、「暗部」だったのです。 学園都市の闇の部分である暗部も、人によっては身の落ち着ける居場所となっていました。 明るい場所で普通の人達と一緒に暮らしていくのが難しい過去や事情がある人は、やはりどこかにいるものです。 そういう人達が暗部という暗い側面を持つ場所で生きていくことになってしまうのは仕方がないことではあります。 でも、上条さんは暴力に頼りながらもそのような人達を救い上げている根元のことを良しとはしませんでした。 根元のやり方では、どこかの別の誰かが苦しんでしまっている。 だから、根元が本当にやるべき事は暗部によって守るのではなく、例外なくみんなを守ることができるような居場所を作るべきだった。 上条さんの言っていることは最もですが、それはとても難しいことでしょう。 根元も私にはこれしかなかったと言っている通り、目の前の人をなるべく最短かつある程度の安定を保って救うには暗部を利用するしかなかったはず。 それでもやるべきだったと言い切る上条さんのブレなさはやはりすごい。 いつも?の言葉の応酬を終えたところで、いよいよ最後の激突。 根元は魔術を捨て、自身の肉体を持って上条さんに挑んできました。 上条さんの右手は異能の力を打ち消すだけであり、上条さん自身はいたって?普通の高校生。 異能の力ではない兵器や格闘術が上条さんの最大の弱点。 クロスカウンターで根元の拳を受け止めた上条さんでしたが、格闘術であれば根元の方が上であるため、クロスカウンターには失敗。 格闘術では敵わないとわかっていた。 だから、上条さんは搦め手として己の血で相手の視界を奪う。 上条さんの強さは、相手の裏を突くこの思考力とそれを実行する決断力にあります。 見事の根元の裏をかき、右の拳で打ち砕いた上条さん。 今回の事件の黒幕であった根元を倒しこれで話は終わりと思いきや、上条さんに忍び寄る幼女の影。 そう、この幼女は物語の冒頭に出たあのどろり幼女。 どろり幼女は妙齢の 妖麗な魔女へと姿を変えると、妖しげな黒い丸薬を口に含み、そのまま上条さんと唇を重ねる。 と、ここで今巻は幕を閉じます。 丸薬を飲んでしまった上条さんはどうなったのか、上条さんと美琴やインデックスはどろり幼女にどう立ち向かうのか、非常に気になるところです。 一方通行サイド 今回の事件のきっかけを作った一方通行。 相手は打ち止めを狙っていたにもかかわらず、一方通行は自ら進んで打ち止めを守りに行こうとはしませんでした。 なぜなら、彼は物語の初めから塀の中に身を置いていたからです。 物語の初めの方では、一方通行がいる場所についての情報があまり描かれていなかったので、てっきりどこかの高層ビルの一室にいるものだと思っていたら、まさか独房の中にいるとは。 気付いたときは一体何をしているんだとびっくりしました。 なぜ、一方通行は捕まっているのか。 それは、一方通行の野望を達成するためです。 一方通行は前巻であるリバースで、アレイスターから学園都市統括理事長の座を譲り受けていました。 新統括理事長としての第一歩、それが学園都市に蔓延る「暗部」の一掃でした。 一方通行は学園都市で最も間近で大人たちの醜悪な実験を見てきました。 自身も一時期はその実験に加担していましたが、身をもって体験し、そして救われた今があるからこそ、学園都市の闇を取り除きたかったんでしょう。 では、暗部を一層するにはどうすればいいか。 蔓延る悪人たちを次々と罰しようとも、それはひとつの悪を裁いただけであり一掃とまではいきません。 人々の意志を変えるような大きな変化が必要。 その大きな変化として、一方通行は自ら検挙を黄泉川に依頼し、捕まりました。 一方通行も仕方がなかったとはいえ、数々の罪を重ねてきた大罪人。 そんな彼が何食わぬ顔で統括理事長として活動していれば、いずれ必ずどこかで綻びが生まれ、瓦解してしまいます。 そんな統括理事長の彼が捕まることで、例え統括理事長であろうとも例外なく悪は罰し償わるんだという事実を、人々に示そうと一方通行は考えたわけです。 一方通行が初めにやろうとしたことが、悪の一掃というのが初期の頃からの成長、変化が感じられて感動してしまいます。 今の一方通行は上条さんにも引けをとらないほど格好よく、魅力的です。 しかし、この選択は一方通行の人生にも大きな影響を与えます。 今までの罪を考慮すると、一生表で両手を振って歩けないでしょうし、打ち止めと会うことも難しくなるかもしれない。 それでも、一方通行は自身の野望を叶えるために、この選択をしたのです。 一方通行は、この野望を達成する上での唯一の懸念点として打ち止めのことがありました。 この暗部一掃の動きの大元が一方通行だとわかれば、すぐさま相手は打ち止めを狙ってくるでしょう。 いつも通り一方通行が助ければいいのですが、今回ばかりはそうすることができない。 特例として、統括理事長である一方通行が独房から出てしまっては、捕まった意味がなくなってしまうから。 だからこそ、一方通行は信じることにしました。 このクソッたれのどうしようもない人達が蔓延る学園都市であっても、助けを求めている人を救ってくれるヒーローがどこかにいることを。 「信じる」ことができるようになったのも、一方通行の大きな変化ですね。 この 「ヒーロー」という存在も今巻のテーマの一つに感じました。 上条さんも負傷したときに俺が行かなくちゃ、と無理をしてでも舞殿の元に向かおうとするのですが、その時に御坂妹がヒーローはあなただけではないと、優しく諭していました。 もう自分ではどうしようもない、誰も助けてくれないと思っていても、必ずどこかのヒーローが助けてくれる。 そんなヒーローに一方通行もなれたのではないでしょうか。 一方通行は独房の中ということで、行動が著しく制限されてしまいますが、これからどう動くのでしょうか。 統括理事長でもありますし、いろいろやりようはあるようには思えますが。 あの悪魔も側にいることですしね。 今後、一方通行がどう動いてくのかも注目です。 おわりに 新シリーズということで、今までとは違った様々な動きの変化が見られた巻でした。 魔術が誰でも例外なく使えるようになってしまった世界。 学園都市の人たちも使うことができるようになった訳ですが、カリキュラムを受けている人が使ったらヤバいんじゃないかと思ったり。 アンナ=シュプレンゲルのそばにいた、聖守護天使エイワスはどうしているのか。 丸薬を飲んでしまった上条さんの行く末はどうなるのか。 今後とも目が離せないとある魔術の禁書目録。 新シリーズも存分に楽しませていただきます。 今巻で唯一でなかったあの主人公に出番はあるのか。

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さどろり!メス〇キにひたすら罵倒される音声 / あきは電鉄

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「おいしいの? それって」 「おいしいわけないジャン」 俺の疑問に、彼女は当然のような顔で言った。 放課後の旧校舎側にある体育倉庫の影はちょっとした死角になっていて、本校舎を回る教師の目も届かない。 大して強くもない野球部がエーだとか、オーだとかよくわからない奇声を上げる中、彼女の吐いた煙は白球に賭ける青春の一ページを白く濁らせた。 「まずいのに吸うの?」 「まずいから吸うんだよ」 「なるほどね」 なるほど。 何がなるほどなのだろう。 知ったかぶりを咎める様子もなく、彼女はまたタバコの先を赤くする。 風に囲いの方へと消えていく煙を見送ると、彼女は何となしに青い銘柄の箱をこちらに差し出した。 「吸ってみる?」 もう何度目だろうか。 彼女も根気のある方だと思う。 根気があるからこそ、最後まで信じて信じて、信じ抜いて、その最後に、親に裏切られたのだろう。 離婚は止められなかった。 「ん」 彼女は箱を持ち替えて、もう片方の手で髪をかき上げた。 露わになった耳には今日はピアスこそしていないけれど、少し前に停学処分を受ける原因となった穴が開いている。 停学明けからは外すようにしているのだから、やはり根が真面目なのだろう。 真面目に、壊れてしまったのだ。 「…………」 「いいね」 一本だけ抜き取ると、彼女は愛らしく笑った。 言葉は乱雑になったけれど、その笑顔が以前とまったく変わらないことに眩暈を覚える。 イライラしているときに吸うと楽になるとは聞くけれど、果たしてこの感情を拭い去るほどの効果は期待できるのだろうか。 彼女が安っぽいライターを差し出し、俺はタバコの先であろう方を差し出す。 「吸わないと」 「え?」 「口にくわえないと、点かないよ」 「ああ」 俺は間抜けな声を出して、手に持った側を口にくわえた。 彼女が近づける火に、映画の見よう見まねで顔を近づける。 吸い加減がわからないけれど、とりあえず吸う。 彼女が手馴れた様子でライターをポケットにしまい、それに遅れて火が点いたのを知る。 指で挟んでタバコの先を見る。 確かに赤い。 煙も出てる。 ああ、これが20円か。 「何が楽しいの、これ」 なんとも無粋なことを言ってしまったなと思ったけれど、彼女は気分を害した様子もなく、また一口分、国の税収に貢献した。 「喉とか、あと気分とか」 「気分が楽しいの?」 「そう、気分」 「そっか」 どうして今日に限って受け取ってしまったのかはわからない。 別に理由があったわけじゃない。 いつか俺は彼女に根負けして一本は吸うことになっていただろうし、それが今日だっただけの話だろう。 俺はもう一度それを口にくわえる。 この程度の違反行為でいまさら気持ちが高揚するとは思わなかったけれど、どうやら別腹らしい。 「口で溜めてね、吸い込んで、吐き出すの」 「ん」 喉で返事をして、口にソレを吸い込む。 なにやらよくわからないものが充満していくのを感じる。 とりあえず吸い込むと、スースーする飴のような涼しさがノドの奥へと降りていくのを感じた。 肺には到達しただろうか。 わからないけれど、吐き出してみる。 俺も俳優みたいだ。 「どう?」 「……なんか、わからない」 「でしょ?」 でしょ、って。 わからないので、俺は次の一口をヤってみる。 相変わらずの感覚をノドで感じながら、俺はタバコの先をもう一度眺める。 先ほどよりも黒い部分が増えている。 ここがヤキを入れるとかいう、死ぬほど熱いらしいアレなソレだったはずだ。 摂氏何度って言ってただろうか。 とりあえず人肌を温めるための温度ではなかったと思う。 俺は引き続き、20円を身体に入れては出していく。 そうしているうちに、なんとなくフワっとした感覚に包まれる。 重力が減ったか体重が減ったかのどちらかだろうとは思うけれど、後者だとするならば、体重測定の日の女子更衣室はさぞヤニ臭くなることだろう。 彼女は指先でタバコを弾き、灰を落とす。 俺も真似をしてみる。 ふむ、様にならない。 ふー……。 最後の一口を豪快に吐き出すと。 彼女は吸殻を地面に押し付けた。 その様子を眺めていると、何となく彼女の手がこちらに伸びた。 「ん」 「ん」 慌ててタバコを遠ざけたときには、すでに口の中に苦さが充満していた。 空いた左手だけではどうにかなるはずもなく、むしろ彼女もそれを狙っていたのかもしれない。 苦いだけのキスを終えると、彼女はじっと俺を見つめた。 その目はすでに、俺の何もかもを見透かしているようにも思えた。 「今日も、ダメなんだ?」 「ダメって?」 「わたしは、いいのに」 「……大事に思ってるから」 一度はぐらかしておいて、大事に思ってるだとか。 自分のムッツリっぷりに笑いそうになる。 彼女の手が勢い良く伸びてきて、俺は壁に背中をぶつける。 あとでしっかり踏みつぶすことを約束して、タバコを地面に捨てる。 彼女の目がそれどころじゃないことを物語っていたからだ。 「大事にって……! 大事って、なに!?」 「……、……」 けほん、と俺がセキをひとつすると、彼女の手が緩んだ。 その瞳に罪の意識が宿り、彼女は弱り、すぐに顔を伏せる。 その手が離れる。 もっと罵倒すればいいのに。 もっと嬲ればいいのに。 そうするだけの権利がきっと彼女にはあって、そうされるだけの罪が俺にはある。 彼女はどこまでいってもイイ子で。 俺はどこまでいっても。 「ごめん、なんでもない」 「いいよ」 俺は彼女を許す。 きっと刺されても彼女を許す。 「また明日ね」 「うん」 去り際の彼女を呼び止めて、俺は一言、好きだよと口にする。 彼女は小さく頷いて、また背中を向けた。 まるで見ていたかのようなタイミングで振動する端末に、俺はただ、ほっと胸をなでおろした。 * * * 「あはあ、あ、あは」 「もう出そう?」 自ら動かす手の動きに、頭が鈍っていく。 ただ目の前の肌色に息を吐きかけながら、狂ったようにソコを扱く。 「終わったら言ってね」 水嶋さんは端末を片手に、わずかに太ももを擦り合わせる。 肉と肉の押し合いに肉が負けて、肉が勝つ。 白いニーハイと、絶対領域と、さらにはそのプリーツスカートの奥を想像するけれど、コピーにコピーを重ねた記憶は劣化が激しくて、解像度が曖昧だ。 いつからだろう。 もう、触らせてもらえないどころか、見せても貰えない。 なのに、それでも俺のソコは馬鹿みたいに猛り狂う。 唾液ばかりが溜まって仕方がない。 慈悲を請うようにその表情を下から伺うけれど、彼女の視線は端末の画面から一ミリたりとも動きはしない。 彼女と別れていないからこそ与えられるご褒美はこんなにも淡白だけれど、それでも俺はどうしようもなく、その脚の虜になってしまう。 自分の恋人を欺いてまで。 その気持ちを踏みにじってまで。 何度も虚構の愛を囁いてまで手に入れたモノは、ただ彼女の脚を間近に眺めながら自分のモノを扱いていいというだけの、ただそれだけの権利。 ただそれだけの、あまりにも惨めな行為に。 俺は脳が焼き切れそうなほどに。 どうしようもなく。 「今日は長いね」 呆れたような言葉さえ糧になってしまう。 だって、与えてはくれているのだから。 こんなにも近くに、彼女の脚を見られるのは、きっと俺だけなのだから。 顔を押し付けたい。 嗅ぎたい。 舐めたい。 揉みたい。 挟まれて、挟ませて、顔を上に滑らせて、そのスカートの奥に。 もう、なにも叶わないのに。 叶わないのに。 叶わないから。 だから、こんなにも俺のソコは、言うことを聞かなくなる。 惨めさに溺れていく。 情けなさに痺れていく。 自分がどうしようもなくなればなくなるほど、本当に、どうしようもなくなる。 彼女の態度に、ヘンタイの、最低のオトコを写す鏡を見せられているようなこの状況に、俺はどうしようもなく、手を動かしてしまう。 最低だ。 最低だ。 最低に、気持ちよくて。 どうしようもなく、肉付きの良い脚で。 あとほんの少し近づけば、前髪すら触れてしまいそうな距離で。 嗤ってもくれない。 相手をする価値もない。 そんな行為が、馬鹿らしくて、たまらない。 あまりにも救いようがなくて、たまらない。 ただの脚なのに。 それはただの肉なのに。 どうにもならない。 どうにもならなくさせられてしまった自分が、水嶋さんの甘さに犯された自分が、たまらなく惨めで、愛おしい。 こんなことで気持ちよくなれる自分が、死んでしまえばいいと思えるほどに大好きで。 相変わらず、手を止められるはずもなくて。 「……手伝ってあげよっか」 彼女の手がプリーツをめくり上げる。 それはたった1センチほどのことだったかもしれない。 増えた肌色の面積なんて大したことなかったに違いない。 でも、もう、ただ、それだけで。 ソコが限界に近づく。 「あはっ、あ、あ、あ、あ」 彼女の行為に、サービスに、誘惑に。 心が先にイきそうになる。 押し寄せる幸せに、股間まで熱が伝わって、真っ白になって。 手が早まって。 太ももが広がって。 「ふふ」 さらに大きくめくられた先の。 わずかに覗く、白色。 「あっ、あっ、あっ、あっ」 爆ぜる。 飛び出る。 天使の姿に呆けるように、ただ口を開いて、それを仰いで。 彼女の優しさにフタが無くなる。 抑えが効かなくなる。 いつ以来かもわからない、その下着の繊維一本一本すらも目に焼き付けるほどに。 ただ眺めて、声を上げて、ソレを扱く。 熱いものが飛び出る。 その程度のコトで、コントロールされてしまう自分に、そんなことで俺をコントロールできてしまうことを知っている水嶋さんに。 ただ放つ。 熱を放つ。 快感に溺れる。 惨めさに悶える。 浅ましさに顔を歪める。 全てが快感になって、俺を突き動かす。 手を動かす。 先端を覆う左手が、その熱を受け止める。 彼女の上履きの隅すらも汚さないようにと、こんな汚いものを見せないようにと、左手が全てを隠して、その手のひらを汚していく。 「ほらほら」 ひらひらとはためくスカートの奥に、見え隠れする白色に、右手が容赦なく暴れ回る。 ブレーキを破壊するチラリズムに、もうすでにイってしまった陰茎の、一番繊細になるその瞬間に、雑すぎるほどの刺激が送り込まれていく。 自ら刺激していく。 壊していく。 このパンツに、俺はヤられたんだ。 このスカートの中に、この太ももに、この靴下に。 目に映る水嶋さんの全てに。 止まらない。 今日もヤられてイく。 今日も負けていく。 どうしようもなく、彼女に敗北していく。 最初から。 その脚に、魅力を覚えてしまったその頃から。 同じ学校へ来てしまったその時から。 もう負けている。 オトコは全員。 「じゃあ、"また"ね」 わざとらしく、最後だけ最高の笑顔を見せて、彼女は去っていく。 いまもまだソコを扱き続けている俺を置いて、いなくなる。 「あ、あ、ああ……」 最後の一滴がどろりと流れ落ちる。 「あ、あ」 残された一匹の自分と、右手と、ドロドロの左手と、馬鹿みたいに露出したソコと。 ただそれだけ。 それしか残っていない空間に。 何らかの感情を。 壊れてしまったモノと一緒に。 吐き出すように。 泣き出すように。 ただ、声を上げる。 そして気付く。 狂った振りをすれば、本当に狂えるかなと思った俺は。 どうやら誰よりも冷静で。 「……はは」 冷徹で、冷酷で。 ただただひたすらに。 正しく、最低な、人間なんだ。 「は、はははは」 おしまい。

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成年同人誌

どろり幼女

「おいしいの? それって」 「おいしいわけないジャン」 俺の疑問に、彼女は当然のような顔で言った。 放課後の旧校舎側にある体育倉庫の影はちょっとした死角になっていて、本校舎を回る教師の目も届かない。 大して強くもない野球部がエーだとか、オーだとかよくわからない奇声を上げる中、彼女の吐いた煙は白球に賭ける青春の一ページを白く濁らせた。 「まずいのに吸うの?」 「まずいから吸うんだよ」 「なるほどね」 なるほど。 何がなるほどなのだろう。 知ったかぶりを咎める様子もなく、彼女はまたタバコの先を赤くする。 風に囲いの方へと消えていく煙を見送ると、彼女は何となしに青い銘柄の箱をこちらに差し出した。 「吸ってみる?」 もう何度目だろうか。 彼女も根気のある方だと思う。 根気があるからこそ、最後まで信じて信じて、信じ抜いて、その最後に、親に裏切られたのだろう。 離婚は止められなかった。 「ん」 彼女は箱を持ち替えて、もう片方の手で髪をかき上げた。 露わになった耳には今日はピアスこそしていないけれど、少し前に停学処分を受ける原因となった穴が開いている。 停学明けからは外すようにしているのだから、やはり根が真面目なのだろう。 真面目に、壊れてしまったのだ。 「…………」 「いいね」 一本だけ抜き取ると、彼女は愛らしく笑った。 言葉は乱雑になったけれど、その笑顔が以前とまったく変わらないことに眩暈を覚える。 イライラしているときに吸うと楽になるとは聞くけれど、果たしてこの感情を拭い去るほどの効果は期待できるのだろうか。 彼女が安っぽいライターを差し出し、俺はタバコの先であろう方を差し出す。 「吸わないと」 「え?」 「口にくわえないと、点かないよ」 「ああ」 俺は間抜けな声を出して、手に持った側を口にくわえた。 彼女が近づける火に、映画の見よう見まねで顔を近づける。 吸い加減がわからないけれど、とりあえず吸う。 彼女が手馴れた様子でライターをポケットにしまい、それに遅れて火が点いたのを知る。 指で挟んでタバコの先を見る。 確かに赤い。 煙も出てる。 ああ、これが20円か。 「何が楽しいの、これ」 なんとも無粋なことを言ってしまったなと思ったけれど、彼女は気分を害した様子もなく、また一口分、国の税収に貢献した。 「喉とか、あと気分とか」 「気分が楽しいの?」 「そう、気分」 「そっか」 どうして今日に限って受け取ってしまったのかはわからない。 別に理由があったわけじゃない。 いつか俺は彼女に根負けして一本は吸うことになっていただろうし、それが今日だっただけの話だろう。 俺はもう一度それを口にくわえる。 この程度の違反行為でいまさら気持ちが高揚するとは思わなかったけれど、どうやら別腹らしい。 「口で溜めてね、吸い込んで、吐き出すの」 「ん」 喉で返事をして、口にソレを吸い込む。 なにやらよくわからないものが充満していくのを感じる。 とりあえず吸い込むと、スースーする飴のような涼しさがノドの奥へと降りていくのを感じた。 肺には到達しただろうか。 わからないけれど、吐き出してみる。 俺も俳優みたいだ。 「どう?」 「……なんか、わからない」 「でしょ?」 でしょ、って。 わからないので、俺は次の一口をヤってみる。 相変わらずの感覚をノドで感じながら、俺はタバコの先をもう一度眺める。 先ほどよりも黒い部分が増えている。 ここがヤキを入れるとかいう、死ぬほど熱いらしいアレなソレだったはずだ。 摂氏何度って言ってただろうか。 とりあえず人肌を温めるための温度ではなかったと思う。 俺は引き続き、20円を身体に入れては出していく。 そうしているうちに、なんとなくフワっとした感覚に包まれる。 重力が減ったか体重が減ったかのどちらかだろうとは思うけれど、後者だとするならば、体重測定の日の女子更衣室はさぞヤニ臭くなることだろう。 彼女は指先でタバコを弾き、灰を落とす。 俺も真似をしてみる。 ふむ、様にならない。 ふー……。 最後の一口を豪快に吐き出すと。 彼女は吸殻を地面に押し付けた。 その様子を眺めていると、何となく彼女の手がこちらに伸びた。 「ん」 「ん」 慌ててタバコを遠ざけたときには、すでに口の中に苦さが充満していた。 空いた左手だけではどうにかなるはずもなく、むしろ彼女もそれを狙っていたのかもしれない。 苦いだけのキスを終えると、彼女はじっと俺を見つめた。 その目はすでに、俺の何もかもを見透かしているようにも思えた。 「今日も、ダメなんだ?」 「ダメって?」 「わたしは、いいのに」 「……大事に思ってるから」 一度はぐらかしておいて、大事に思ってるだとか。 自分のムッツリっぷりに笑いそうになる。 彼女の手が勢い良く伸びてきて、俺は壁に背中をぶつける。 あとでしっかり踏みつぶすことを約束して、タバコを地面に捨てる。 彼女の目がそれどころじゃないことを物語っていたからだ。 「大事にって……! 大事って、なに!?」 「……、……」 けほん、と俺がセキをひとつすると、彼女の手が緩んだ。 その瞳に罪の意識が宿り、彼女は弱り、すぐに顔を伏せる。 その手が離れる。 もっと罵倒すればいいのに。 もっと嬲ればいいのに。 そうするだけの権利がきっと彼女にはあって、そうされるだけの罪が俺にはある。 彼女はどこまでいってもイイ子で。 俺はどこまでいっても。 「ごめん、なんでもない」 「いいよ」 俺は彼女を許す。 きっと刺されても彼女を許す。 「また明日ね」 「うん」 去り際の彼女を呼び止めて、俺は一言、好きだよと口にする。 彼女は小さく頷いて、また背中を向けた。 まるで見ていたかのようなタイミングで振動する端末に、俺はただ、ほっと胸をなでおろした。 * * * 「あはあ、あ、あは」 「もう出そう?」 自ら動かす手の動きに、頭が鈍っていく。 ただ目の前の肌色に息を吐きかけながら、狂ったようにソコを扱く。 「終わったら言ってね」 水嶋さんは端末を片手に、わずかに太ももを擦り合わせる。 肉と肉の押し合いに肉が負けて、肉が勝つ。 白いニーハイと、絶対領域と、さらにはそのプリーツスカートの奥を想像するけれど、コピーにコピーを重ねた記憶は劣化が激しくて、解像度が曖昧だ。 いつからだろう。 もう、触らせてもらえないどころか、見せても貰えない。 なのに、それでも俺のソコは馬鹿みたいに猛り狂う。 唾液ばかりが溜まって仕方がない。 慈悲を請うようにその表情を下から伺うけれど、彼女の視線は端末の画面から一ミリたりとも動きはしない。 彼女と別れていないからこそ与えられるご褒美はこんなにも淡白だけれど、それでも俺はどうしようもなく、その脚の虜になってしまう。 自分の恋人を欺いてまで。 その気持ちを踏みにじってまで。 何度も虚構の愛を囁いてまで手に入れたモノは、ただ彼女の脚を間近に眺めながら自分のモノを扱いていいというだけの、ただそれだけの権利。 ただそれだけの、あまりにも惨めな行為に。 俺は脳が焼き切れそうなほどに。 どうしようもなく。 「今日は長いね」 呆れたような言葉さえ糧になってしまう。 だって、与えてはくれているのだから。 こんなにも近くに、彼女の脚を見られるのは、きっと俺だけなのだから。 顔を押し付けたい。 嗅ぎたい。 舐めたい。 揉みたい。 挟まれて、挟ませて、顔を上に滑らせて、そのスカートの奥に。 もう、なにも叶わないのに。 叶わないのに。 叶わないから。 だから、こんなにも俺のソコは、言うことを聞かなくなる。 惨めさに溺れていく。 情けなさに痺れていく。 自分がどうしようもなくなればなくなるほど、本当に、どうしようもなくなる。 彼女の態度に、ヘンタイの、最低のオトコを写す鏡を見せられているようなこの状況に、俺はどうしようもなく、手を動かしてしまう。 最低だ。 最低だ。 最低に、気持ちよくて。 どうしようもなく、肉付きの良い脚で。 あとほんの少し近づけば、前髪すら触れてしまいそうな距離で。 嗤ってもくれない。 相手をする価値もない。 そんな行為が、馬鹿らしくて、たまらない。 あまりにも救いようがなくて、たまらない。 ただの脚なのに。 それはただの肉なのに。 どうにもならない。 どうにもならなくさせられてしまった自分が、水嶋さんの甘さに犯された自分が、たまらなく惨めで、愛おしい。 こんなことで気持ちよくなれる自分が、死んでしまえばいいと思えるほどに大好きで。 相変わらず、手を止められるはずもなくて。 「……手伝ってあげよっか」 彼女の手がプリーツをめくり上げる。 それはたった1センチほどのことだったかもしれない。 増えた肌色の面積なんて大したことなかったに違いない。 でも、もう、ただ、それだけで。 ソコが限界に近づく。 「あはっ、あ、あ、あ、あ」 彼女の行為に、サービスに、誘惑に。 心が先にイきそうになる。 押し寄せる幸せに、股間まで熱が伝わって、真っ白になって。 手が早まって。 太ももが広がって。 「ふふ」 さらに大きくめくられた先の。 わずかに覗く、白色。 「あっ、あっ、あっ、あっ」 爆ぜる。 飛び出る。 天使の姿に呆けるように、ただ口を開いて、それを仰いで。 彼女の優しさにフタが無くなる。 抑えが効かなくなる。 いつ以来かもわからない、その下着の繊維一本一本すらも目に焼き付けるほどに。 ただ眺めて、声を上げて、ソレを扱く。 熱いものが飛び出る。 その程度のコトで、コントロールされてしまう自分に、そんなことで俺をコントロールできてしまうことを知っている水嶋さんに。 ただ放つ。 熱を放つ。 快感に溺れる。 惨めさに悶える。 浅ましさに顔を歪める。 全てが快感になって、俺を突き動かす。 手を動かす。 先端を覆う左手が、その熱を受け止める。 彼女の上履きの隅すらも汚さないようにと、こんな汚いものを見せないようにと、左手が全てを隠して、その手のひらを汚していく。 「ほらほら」 ひらひらとはためくスカートの奥に、見え隠れする白色に、右手が容赦なく暴れ回る。 ブレーキを破壊するチラリズムに、もうすでにイってしまった陰茎の、一番繊細になるその瞬間に、雑すぎるほどの刺激が送り込まれていく。 自ら刺激していく。 壊していく。 このパンツに、俺はヤられたんだ。 このスカートの中に、この太ももに、この靴下に。 目に映る水嶋さんの全てに。 止まらない。 今日もヤられてイく。 今日も負けていく。 どうしようもなく、彼女に敗北していく。 最初から。 その脚に、魅力を覚えてしまったその頃から。 同じ学校へ来てしまったその時から。 もう負けている。 オトコは全員。 「じゃあ、"また"ね」 わざとらしく、最後だけ最高の笑顔を見せて、彼女は去っていく。 いまもまだソコを扱き続けている俺を置いて、いなくなる。 「あ、あ、ああ……」 最後の一滴がどろりと流れ落ちる。 「あ、あ」 残された一匹の自分と、右手と、ドロドロの左手と、馬鹿みたいに露出したソコと。 ただそれだけ。 それしか残っていない空間に。 何らかの感情を。 壊れてしまったモノと一緒に。 吐き出すように。 泣き出すように。 ただ、声を上げる。 そして気付く。 狂った振りをすれば、本当に狂えるかなと思った俺は。 どうやら誰よりも冷静で。 「……はは」 冷徹で、冷酷で。 ただただひたすらに。 正しく、最低な、人間なんだ。 「は、はははは」 おしまい。

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