のだめ 同人。 のだめ21巻: ミラゲな人

最後の恋をした

のだめ 同人

久しぶりに冬コミに参加させて頂きます。 29日(1日目)東3ホールウ-32a「Andantino」でお待ちしております。 【あらすじ】 峰と清良の結婚披露宴でお祝いとして演奏した千秋とのだめのピアノ連弾の様子が、演奏者が特定されない形ながらネットの動画投稿サイトに掲載された。 すぐに削除されたものの、偶然それを見た音楽プロデューサーが、その演奏に感動し、これを弾いているふたりの正体を追い始める。 推理と伝手と幸運で千秋とのだめにたどりついたプロデューサーは、ふたりにピアノ・デュオのCD制作を持ちかけるが……。 【仕様】82ページ(表紙込) B6版 表紙:フルカラー 本文:モノクロ 目次ページと本文のレイアウト見本を別ページ【 】に掲載しています。 合わせてご覧ください。 通販のご予約はBOOTHにて、当日のお取り置きご予約はサークルブログにて承っています。 詳細はサークルブログ(プロフィール欄にリンクがあります)をご覧ください。 では当日、お目にかかれるのを楽しみにしています。 [chapter:第1章 穏やかな休日(by咲蘭)] 鼻歌まじりで洗濯機を回し、掃除を始める。 しばらく二人で日本に帰国していたから、部屋は散らかってはいないが、少し埃っぽいのだ。 三善のアパルトマンの窓を開け放つと、まだ蒸し暑い八月の終わりの風が部屋に入り込んで、千秋は少し顔を顰めた。 それでもなんとなく幸せで、脳内に流れる音楽が鼻歌となる。 ふいに、その鼻歌に合わせるようにピアノが流れ出して、振り向くと、得意顔ののだめが、うずうずしながらこちらを見ていた。 「今は弾かないぞ。 掃除が先だ」 棚の上をクロスで拭き掃除しながら言う。 「えーー。 ラプソディ歌ってたから!あの感動をもう一度デスよー」 しれっと掃除を続ける千秋の背中に、のだめがパタパタと寄ってきて、目の間ににゅっとスマートフォンを差し出した。 「ん?」 「真澄ちゃんから、写真が届いたんデス」 のだめの指が画面を滑って、結構な枚数の写真が次々と めくられていく。 暑い夏にわざわざ式を挙げたのも、世界中で活躍している音大時代の友人や、現役の演奏家たちのシーズンオフを狙って招待したいという二人の希望だと思われた。 なにより二人の結婚式に欠席する選択肢はそもそも無く、一も二もなく出席と返答し、大喜びののだめとともに帰国して、華やかで、それでいてやさしい結婚式と披露宴、二次会三次会まで出席してきたのだった。 峰の号泣顏の写真の次にめくられた写真。 真一くんとのだめデス」 「ん」 峰と清良の結婚式では、無論、楽器に堪能な友人たちが多数出席しており、それぞれが得意の楽器で余興と呼ぶには勿体ないほどの一曲を披露し、場を盛り上げた。 披露宴会場に用意された一台のグランドピアノ。 そこに二人で座って連弾している写真。 曲目は、ガーシュウィンのラプソティ・イン・ブルー。 タキシード姿の千秋と、バラ色のパーディドレスののだめが、演奏中に目線を交わした瞬間を捕らえたベストショット。 「ほわぁ、真澄ちゃん、グッジョブですよ!コレいい写真デスねぇ。 のだめ、これ引き伸ばしてお部屋に飾りマス!」 「げ。 オレそういうのは苦手なんだ!部屋に二人の写真飾るとか!」 「むきゃ!ここは、二人のスィートハウスなんデスよ!二人のラブラブ写真が飾ってあるのが当然ってもんデスよ!」 「だから、苦手なんだよ、わかれよ!」 目のやり場に困るだろ、と皆まで言わず、話は終わりだとばかりに、のだめに背中を向けて拭き掃除に戻る。 「いーえ、わかりまセン!」 ムキになったのだめが、ふふんと鼻を鳴らした。 「……なんだ?」 「のだめ知ってマスよ。 真一くんがのだめの写真、持ち歩いてること」 「はぁ!?持ち歩いてねぇ!」 「スマホ」 拭き掃除をする千秋の動きがピタリと止まる。 そもそも、それは事実であって、でも誰にも知られていない事実だったはずなのだ。 「のだめが覗き見したんじゃないデスよ。 だって真一くんのスマホ、きっちりパスワードかかってますから、さすがにのだめも解読できないし」 「解読して開こうとしたことがあるんじゃねーか!」 「まあまあ。 それは、置いといて。 スマホの中にのだめの写真がある教えてくれたのは、黒木くんデス」 「はぁぁああっ?黒木くんがなんで!」 「だって、真一くんが自ら嬉しそうに見せてくれたって言ってましたよ?」 「ありえないだろっ!そんなこと!」 「それは、峰くんたちの結婚式の三次会のことでした」 突然、物語のナレーション風にのだめが語りだす。 三次会。 「真一くんにしては珍しく大勢の友だちの前でご機嫌で酔っ払いになって、まあ、峰くんたちの幸せを喜んだ末のことだと思いますが、黒木くんと店の端のほうの席でなにやら二人で談笑なさっておりました」 その口調。 悪い予感しかしない。 「……確かに、みんなの輪から外れて、黒木くんと二人でいたような記憶はある」 「で、話の流れがターニャとのだめの話になったらしく、真一くん自らスマホを取り出し写真のフォルダを見せてくれたそうです」 「げ」 「で、そこで黒木くんが見たものは」 「……終了。 その話終わり」 「むきゃ?」 背中から回り込んで顔を覗かれる。 「真一くん、耳が赤いデスよ?」 「うるせ」 「のだめ、嬉しかったデスよ?」 「……たまたま、のだめのリサイタルの音楽評をネットで見てたら、おまえが演奏してるいい写真があったからだな、まあ、いちおう…」 「保存してくれたんですか」 ちらりと視線をくれてやると、やけに嬉しそうなのだめと目が合った。 「真一くんは、のだめのことが大好きデスもんね?」 「おまえ、その減らず口塞ぐぞ、まじで」 少し眉間を寄せて言ってみたら、 「ハイ、どうぞ」 そう言って、唇を尖らせて顔を寄せてくるから、その唇にキスをして、さらに軽く頭突きをくらわせてやる。 掃除中の手にはクロスがあるから、手でひっぱたくわけにはいかない。 「うぎゃーーー!痛いデス!」 「もう、そろそろピアノ弾けよ!明後日にはザルツブルグだろーが」 「あ、そでした、モツアルト練習しなくちゃ」 「オレも掃除が終わったら、自分の勉強するから。 新シーズンが始まるし」 「ハーイ」 のだめは弾かれたように駆け出して、ピアノの前に座る。 八月末、一ヶ月半にも及ぶザルツブルグ音楽祭の終盤で、のだめはウィーン・フィルとの共演でモーツァルトの協奏曲を弾く。 素晴らしい大舞台だ。 「じゃあ、のだめは応援を兼ねてモツアルト弾きますから、真一くんはお掃除がんばってくだサイ!では!」 「ふざけんな」 言い返したけれど、でも、確かに。 千秋は拭き掃除の手を止めて、ピアノを弾くのだめの横顔を見る。 風に揺れる栗色の髪。 すでに尖らせた唇。 一音一音が、かすかに、でも確実に感情を震わせる稀有な音色。 のだめのピアノは、こうしてプロのピアニストになってからも年々進化していて、モーツァルトなど、時に、ぎょっとするような深淵を見せてくれることがある。 これからも大きな舞台で本領を発揮して、多くの人にのだめのピアノを聴いてもらいたいと思う。 心からそう思える聴かせる価値のあるピアノなのだ。 千秋はのだめのピアノに、穏やかな笑みを浮かべた。 [newpage] [chapter:第2章 偶然の出会い(byまゆ)] 大量のデモ音源をすべてチェックし終えて、大原は大きくひとつ息を吐いた。 特に悪くもないが、コレだ、というほどのインパクトもない。 そつなくまとめられている。 ひとことで言うならそれ以上でも以下でもない。 音楽プロデューサーであり、演奏家や音楽作家のマネージメントをする会社の経営者であり、ひとりの現役ミュージシャンでもある大原のもとへは、多くの若者たちから応募用の音源が送られてくる。 会社のホームページで応募を受けている旨を記載している以上、応募作をチェックして採否の判定をするのもまた大原の仕事ではあるが、実際のところ、この自薦の連中の中から採用した実績は残念ながらまだない。 それでも、金の卵はどこかにいると信じて、大原は自薦を受け付け続けている。 まあ、現在、自社でマネージメントしている作・編曲家ふたりのうち、ひとりは関わっていた専門学校で見つけた人材だったし、もうひとりは、自作の曲や演奏をネットの掲示板に投稿しているのをたまたま耳にして、こちらから声をかけた。 つまりどちらもスカウトだ。 本当の才能は、自ら強く主張しなくても、隠しきれない光を放ってこちらに訴えかけてくるものなのかもしれない。 「だから、ついついコッチも見ちゃうんだよな」 大原はマウスを動かしてブラウザを開く。 Youtubeやニコニコ動画を適当にキーワードを入れて検索しながら、面白そうなものをざっと流していく。 ひとつ開くと、関連やおすすめなどが表示されるので、それも参考にする。 玉石混交という言葉があるが、こういうところにあるもののほぼ全部が「石」ばかりだ。 だが、その中に万のうちのひとつ、億のうちのひとつに「玉」になるものが隠れている。 ここに放置されていればただの「石」で終わるが、それを嗅ぎ分けてきれいに磨き上げて「玉」として世に出すのもまた、プロデューサーとしての自分の仕事だろうと思うから、大原は根気よく画面に向かい合う。 「はい?」 その動画を再生した時、大原は思わずそう声が漏れてしまった。 手にしていた書類を脇に置き、思わず画面を注視し直す。 「歌ってみた」とか「弾いてみた」とタグが付けられた動画は、素人撮影ながら、最近は機器の質も高いし、それなりのクオリティのものがほとんどだが、パソコンから流れてきた音声は、雑音やら歓声やらが演奏にかぶってしまっていた。 映像も手ブレがひどく、じっと画面を見ていると船酔いのような心地になりそうだった。 「なんだこれ?」 だが、その雑音の中から浮かび上がるピアノの音は、録音の音質の荒さなどものともしない強い訴求力を備えていた。 改めて映像をよく見れば、何かのパーティー、おそらくは結婚披露宴か二次会か、での余興演奏らしい。 グランドピアノのふたやピアノを囲む人々が邪魔をして、演奏者の姿はわからないが、ピアノの下に紅いドレスと黒いズボンが見えたから、男女のデュオだということだけはわかった。 曲は「ラプソディ・イン・ブルー」。 改めて説明するまでもない超有名曲だし、もはや古典と言いたくなるような曲だが、なんだろう、この雑音の向こうから浮かびあがってくる高揚感は。 まさに絶妙のセッション。 ふたりともかなりの演奏技術を持つピアニストなのだろう。 その技術を余すことなく駆使して次々と主題を展開させ、時に他の曲、たとえば同じガーシュインの作った「アイ・ガット・リズム」やジョプリンの「ジ・エンターテイナー」などのスタンダードをジャズテイストにアレンジして盛り込んだり、かと思えば、ベートーベンやモーツァルトが顔を出したりもして、座興というにはもったいなさすぎるほどのハイレベルな演奏だった。 事前にきっちり練習してきました、というよりも、どちらかが自由に次の曲に進むのにもう一方が合わせて、さらに盛り上げていっているのだと感じた。 おそらく、最初と最後は「ラプソディ・イン・ブルー」にする、程度の打ち合わせのみだったのではないか。 こんなところに、こんな雑な動画の中にきらめく「玉」が存在した。 このふたりなら、どんなジャンルの曲でも一流の演奏ができるだろう。 これだけの即興演奏ができるということは、作曲家としても十分に通用するに違いない。 こんなネットの海の片隅ではなく、自分が広く世に送り出したい。 なんとしても正体を知りたい。 いったい誰なんだ、こいつらは……。 大原は胸の鼓動の高鳴りに体を震わせつつ、もう一度再生させようとマウスを動かした。 だが、たった今見ていたはずの動画はもうその場に存在していなかった。 画面に表示された「削除されました」との無情なメッセージを信じられない思いで見つめながら、大原はがっくりと肩を落とす。 金の卵を求める過ぎる心が見せた幻だったのだろうか。 いや確かに自分はこの目で見たし、この耳で聞いた。 まだあの素晴らしい演奏が耳の底にも胸の奥にも残っている。 「誰なんだろうか……」 あの演奏技術からして、おそらくきっちりとクラシックピアノの教育を受けている人間のはずだ。 それもかなり高度な。 その程度の想像は簡単についた。 だが、音楽業界で長く仕事をしてきたとはいえ、大原自身はクラシック畑とはあまり縁がないし、人脈もないので、そこから先の答えにはとてもたどりつけそうにない。 「あああああ、やっと出会ったと思ったのに八方ふさがりかよ」 大原は悔し紛れに大きくマウスを滑らせ、ブラウザを閉じたのだった。

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のだめ21巻: ミラゲな人

のだめ 同人

宝塚、刀剣乱舞、刀ミュ、刀ステ、2. 5D、若手俳優、V系ロック耽美派、アート、BL・書道・英話・演劇・歌舞伎・株式・投資などなどいろいろ趣味あります。 基本的に趣味が近い方の読者様を募集しています。 もう何十年??宝塚はほぼ毎月どの組も見ています。 柚香光FC 永久輝せあ 月城かなと 朝美絢 水美舞斗 礼真琴 望海風斗 綾凰華 紫門ゆりや 他 花組に好きな人が多いかな OG 蘭寿とむ昔FC 凰稀かなめ昔FC 柚希礼音 紫苑ゆう 早霧せいな 美弥るりか 明日海りお 紅ゆずる を特に応援しています。 ひとこさんのお茶会に誘ってくださる方を 探しております。 お茶会はいろいろ出ています。 柚香光お茶会募集中です。 同行者募集中。 東宝ミュージカル 刀剣乱舞やテニミュや2. 5D俳優出演作品、特撮関係 スタジオライフなどテニミュ出身若手俳優さんの舞台や映画もよく観ます。 相葉裕樹 弘樹改め 加藤和樹 細貝圭 城田優 ココア男。 久保田悠来 斎藤工 鈴木拡樹 黒羽麻璃央 荒牧慶彦 三浦宏規 丘山晴己 寿里 小栗旬 藤原竜也 植原卓也 アミューズ 関係の舞台を中心に見ています。 BL映画から洋画まで幅広いです。 昔は90年代最盛のバンドをいろいろ聴いてました。 特に神だったのがMALICE MIZERとLAREINEです。 それから耽美系が好きになりました。 JPOPだと 西川貴教T. 演劇の音響・作曲の活動も時々してました。。 ゴシックロリータ系の アクセサリー製作・販売やってました。 株は長期運用のみ。 外国株や外国債については勉強中です。 現在は證券アナリストの勉強中。 基本は三次元腐女子です。 時々執事喫茶スワロウテイルに帰宅。 コンセルバトワールの授業について行けないのだめ。 向こうでは曲や作曲家の分析位前以てできて当たり前の世界で、初見でさらさら弾けないと通用しないんですね。 十歳の学生がいたり……日本の学生と違ってレベルが高い勉強をしているなぁと思います。 本来ならプロでデビューする人は16で世界のコンクールの上位になり、向こうの高校に行きすでに活動している人が多く、日本の大学に行く人は既に出遅れていると思います。 だから音楽業界を知っている人はのだめや千秋が二十歳過ぎて留学でデビューというのは遅すぎるし、甘すぎると言っています。 漫画なのでその辺はアバウトなんでしょうが留学を早くした人の方が伸びるし、いくら才能があっても人脈や運もあるなぁと思います。 幼稚園の教師を目指していたのだめが知識面でコンセルバトワールで壁にぶちあたるのは当たり前だし、サラブレッドの千秋とは違うし、世界は広いと思いますね。 のだめのモーツァルトの衣装可愛かったですね。 モーツァルトはある意味変態な部分があるので、のだめも理解できる部分があるのかなと思います。 シュトレーゼマンの好色はモーツァルトレベルかなと思ったりしますね。

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のだめカンタービレ ヨーロッパ編 後編

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久しぶりに冬コミに参加させて頂きます。 29日(1日目)東3ホールウ-32a「Andantino」でお待ちしております。 【あらすじ】 峰と清良の結婚披露宴でお祝いとして演奏した千秋とのだめのピアノ連弾の様子が、演奏者が特定されない形ながらネットの動画投稿サイトに掲載された。 すぐに削除されたものの、偶然それを見た音楽プロデューサーが、その演奏に感動し、これを弾いているふたりの正体を追い始める。 推理と伝手と幸運で千秋とのだめにたどりついたプロデューサーは、ふたりにピアノ・デュオのCD制作を持ちかけるが……。 【仕様】82ページ(表紙込) B6版 表紙:フルカラー 本文:モノクロ 目次ページと本文のレイアウト見本を別ページ【 】に掲載しています。 合わせてご覧ください。 通販のご予約はBOOTHにて、当日のお取り置きご予約はサークルブログにて承っています。 詳細はサークルブログ(プロフィール欄にリンクがあります)をご覧ください。 では当日、お目にかかれるのを楽しみにしています。 [chapter:第1章 穏やかな休日(by咲蘭)] 鼻歌まじりで洗濯機を回し、掃除を始める。 しばらく二人で日本に帰国していたから、部屋は散らかってはいないが、少し埃っぽいのだ。 三善のアパルトマンの窓を開け放つと、まだ蒸し暑い八月の終わりの風が部屋に入り込んで、千秋は少し顔を顰めた。 それでもなんとなく幸せで、脳内に流れる音楽が鼻歌となる。 ふいに、その鼻歌に合わせるようにピアノが流れ出して、振り向くと、得意顔ののだめが、うずうずしながらこちらを見ていた。 「今は弾かないぞ。 掃除が先だ」 棚の上をクロスで拭き掃除しながら言う。 「えーー。 ラプソディ歌ってたから!あの感動をもう一度デスよー」 しれっと掃除を続ける千秋の背中に、のだめがパタパタと寄ってきて、目の間ににゅっとスマートフォンを差し出した。 「ん?」 「真澄ちゃんから、写真が届いたんデス」 のだめの指が画面を滑って、結構な枚数の写真が次々と めくられていく。 暑い夏にわざわざ式を挙げたのも、世界中で活躍している音大時代の友人や、現役の演奏家たちのシーズンオフを狙って招待したいという二人の希望だと思われた。 なにより二人の結婚式に欠席する選択肢はそもそも無く、一も二もなく出席と返答し、大喜びののだめとともに帰国して、華やかで、それでいてやさしい結婚式と披露宴、二次会三次会まで出席してきたのだった。 峰の号泣顏の写真の次にめくられた写真。 真一くんとのだめデス」 「ん」 峰と清良の結婚式では、無論、楽器に堪能な友人たちが多数出席しており、それぞれが得意の楽器で余興と呼ぶには勿体ないほどの一曲を披露し、場を盛り上げた。 披露宴会場に用意された一台のグランドピアノ。 そこに二人で座って連弾している写真。 曲目は、ガーシュウィンのラプソティ・イン・ブルー。 タキシード姿の千秋と、バラ色のパーディドレスののだめが、演奏中に目線を交わした瞬間を捕らえたベストショット。 「ほわぁ、真澄ちゃん、グッジョブですよ!コレいい写真デスねぇ。 のだめ、これ引き伸ばしてお部屋に飾りマス!」 「げ。 オレそういうのは苦手なんだ!部屋に二人の写真飾るとか!」 「むきゃ!ここは、二人のスィートハウスなんデスよ!二人のラブラブ写真が飾ってあるのが当然ってもんデスよ!」 「だから、苦手なんだよ、わかれよ!」 目のやり場に困るだろ、と皆まで言わず、話は終わりだとばかりに、のだめに背中を向けて拭き掃除に戻る。 「いーえ、わかりまセン!」 ムキになったのだめが、ふふんと鼻を鳴らした。 「……なんだ?」 「のだめ知ってマスよ。 真一くんがのだめの写真、持ち歩いてること」 「はぁ!?持ち歩いてねぇ!」 「スマホ」 拭き掃除をする千秋の動きがピタリと止まる。 そもそも、それは事実であって、でも誰にも知られていない事実だったはずなのだ。 「のだめが覗き見したんじゃないデスよ。 だって真一くんのスマホ、きっちりパスワードかかってますから、さすがにのだめも解読できないし」 「解読して開こうとしたことがあるんじゃねーか!」 「まあまあ。 それは、置いといて。 スマホの中にのだめの写真がある教えてくれたのは、黒木くんデス」 「はぁぁああっ?黒木くんがなんで!」 「だって、真一くんが自ら嬉しそうに見せてくれたって言ってましたよ?」 「ありえないだろっ!そんなこと!」 「それは、峰くんたちの結婚式の三次会のことでした」 突然、物語のナレーション風にのだめが語りだす。 三次会。 「真一くんにしては珍しく大勢の友だちの前でご機嫌で酔っ払いになって、まあ、峰くんたちの幸せを喜んだ末のことだと思いますが、黒木くんと店の端のほうの席でなにやら二人で談笑なさっておりました」 その口調。 悪い予感しかしない。 「……確かに、みんなの輪から外れて、黒木くんと二人でいたような記憶はある」 「で、話の流れがターニャとのだめの話になったらしく、真一くん自らスマホを取り出し写真のフォルダを見せてくれたそうです」 「げ」 「で、そこで黒木くんが見たものは」 「……終了。 その話終わり」 「むきゃ?」 背中から回り込んで顔を覗かれる。 「真一くん、耳が赤いデスよ?」 「うるせ」 「のだめ、嬉しかったデスよ?」 「……たまたま、のだめのリサイタルの音楽評をネットで見てたら、おまえが演奏してるいい写真があったからだな、まあ、いちおう…」 「保存してくれたんですか」 ちらりと視線をくれてやると、やけに嬉しそうなのだめと目が合った。 「真一くんは、のだめのことが大好きデスもんね?」 「おまえ、その減らず口塞ぐぞ、まじで」 少し眉間を寄せて言ってみたら、 「ハイ、どうぞ」 そう言って、唇を尖らせて顔を寄せてくるから、その唇にキスをして、さらに軽く頭突きをくらわせてやる。 掃除中の手にはクロスがあるから、手でひっぱたくわけにはいかない。 「うぎゃーーー!痛いデス!」 「もう、そろそろピアノ弾けよ!明後日にはザルツブルグだろーが」 「あ、そでした、モツアルト練習しなくちゃ」 「オレも掃除が終わったら、自分の勉強するから。 新シーズンが始まるし」 「ハーイ」 のだめは弾かれたように駆け出して、ピアノの前に座る。 八月末、一ヶ月半にも及ぶザルツブルグ音楽祭の終盤で、のだめはウィーン・フィルとの共演でモーツァルトの協奏曲を弾く。 素晴らしい大舞台だ。 「じゃあ、のだめは応援を兼ねてモツアルト弾きますから、真一くんはお掃除がんばってくだサイ!では!」 「ふざけんな」 言い返したけれど、でも、確かに。 千秋は拭き掃除の手を止めて、ピアノを弾くのだめの横顔を見る。 風に揺れる栗色の髪。 すでに尖らせた唇。 一音一音が、かすかに、でも確実に感情を震わせる稀有な音色。 のだめのピアノは、こうしてプロのピアニストになってからも年々進化していて、モーツァルトなど、時に、ぎょっとするような深淵を見せてくれることがある。 これからも大きな舞台で本領を発揮して、多くの人にのだめのピアノを聴いてもらいたいと思う。 心からそう思える聴かせる価値のあるピアノなのだ。 千秋はのだめのピアノに、穏やかな笑みを浮かべた。 [newpage] [chapter:第2章 偶然の出会い(byまゆ)] 大量のデモ音源をすべてチェックし終えて、大原は大きくひとつ息を吐いた。 特に悪くもないが、コレだ、というほどのインパクトもない。 そつなくまとめられている。 ひとことで言うならそれ以上でも以下でもない。 音楽プロデューサーであり、演奏家や音楽作家のマネージメントをする会社の経営者であり、ひとりの現役ミュージシャンでもある大原のもとへは、多くの若者たちから応募用の音源が送られてくる。 会社のホームページで応募を受けている旨を記載している以上、応募作をチェックして採否の判定をするのもまた大原の仕事ではあるが、実際のところ、この自薦の連中の中から採用した実績は残念ながらまだない。 それでも、金の卵はどこかにいると信じて、大原は自薦を受け付け続けている。 まあ、現在、自社でマネージメントしている作・編曲家ふたりのうち、ひとりは関わっていた専門学校で見つけた人材だったし、もうひとりは、自作の曲や演奏をネットの掲示板に投稿しているのをたまたま耳にして、こちらから声をかけた。 つまりどちらもスカウトだ。 本当の才能は、自ら強く主張しなくても、隠しきれない光を放ってこちらに訴えかけてくるものなのかもしれない。 「だから、ついついコッチも見ちゃうんだよな」 大原はマウスを動かしてブラウザを開く。 Youtubeやニコニコ動画を適当にキーワードを入れて検索しながら、面白そうなものをざっと流していく。 ひとつ開くと、関連やおすすめなどが表示されるので、それも参考にする。 玉石混交という言葉があるが、こういうところにあるもののほぼ全部が「石」ばかりだ。 だが、その中に万のうちのひとつ、億のうちのひとつに「玉」になるものが隠れている。 ここに放置されていればただの「石」で終わるが、それを嗅ぎ分けてきれいに磨き上げて「玉」として世に出すのもまた、プロデューサーとしての自分の仕事だろうと思うから、大原は根気よく画面に向かい合う。 「はい?」 その動画を再生した時、大原は思わずそう声が漏れてしまった。 手にしていた書類を脇に置き、思わず画面を注視し直す。 「歌ってみた」とか「弾いてみた」とタグが付けられた動画は、素人撮影ながら、最近は機器の質も高いし、それなりのクオリティのものがほとんどだが、パソコンから流れてきた音声は、雑音やら歓声やらが演奏にかぶってしまっていた。 映像も手ブレがひどく、じっと画面を見ていると船酔いのような心地になりそうだった。 「なんだこれ?」 だが、その雑音の中から浮かび上がるピアノの音は、録音の音質の荒さなどものともしない強い訴求力を備えていた。 改めて映像をよく見れば、何かのパーティー、おそらくは結婚披露宴か二次会か、での余興演奏らしい。 グランドピアノのふたやピアノを囲む人々が邪魔をして、演奏者の姿はわからないが、ピアノの下に紅いドレスと黒いズボンが見えたから、男女のデュオだということだけはわかった。 曲は「ラプソディ・イン・ブルー」。 改めて説明するまでもない超有名曲だし、もはや古典と言いたくなるような曲だが、なんだろう、この雑音の向こうから浮かびあがってくる高揚感は。 まさに絶妙のセッション。 ふたりともかなりの演奏技術を持つピアニストなのだろう。 その技術を余すことなく駆使して次々と主題を展開させ、時に他の曲、たとえば同じガーシュインの作った「アイ・ガット・リズム」やジョプリンの「ジ・エンターテイナー」などのスタンダードをジャズテイストにアレンジして盛り込んだり、かと思えば、ベートーベンやモーツァルトが顔を出したりもして、座興というにはもったいなさすぎるほどのハイレベルな演奏だった。 事前にきっちり練習してきました、というよりも、どちらかが自由に次の曲に進むのにもう一方が合わせて、さらに盛り上げていっているのだと感じた。 おそらく、最初と最後は「ラプソディ・イン・ブルー」にする、程度の打ち合わせのみだったのではないか。 こんなところに、こんな雑な動画の中にきらめく「玉」が存在した。 このふたりなら、どんなジャンルの曲でも一流の演奏ができるだろう。 これだけの即興演奏ができるということは、作曲家としても十分に通用するに違いない。 こんなネットの海の片隅ではなく、自分が広く世に送り出したい。 なんとしても正体を知りたい。 いったい誰なんだ、こいつらは……。 大原は胸の鼓動の高鳴りに体を震わせつつ、もう一度再生させようとマウスを動かした。 だが、たった今見ていたはずの動画はもうその場に存在していなかった。 画面に表示された「削除されました」との無情なメッセージを信じられない思いで見つめながら、大原はがっくりと肩を落とす。 金の卵を求める過ぎる心が見せた幻だったのだろうか。 いや確かに自分はこの目で見たし、この耳で聞いた。 まだあの素晴らしい演奏が耳の底にも胸の奥にも残っている。 「誰なんだろうか……」 あの演奏技術からして、おそらくきっちりとクラシックピアノの教育を受けている人間のはずだ。 それもかなり高度な。 その程度の想像は簡単についた。 だが、音楽業界で長く仕事をしてきたとはいえ、大原自身はクラシック畑とはあまり縁がないし、人脈もないので、そこから先の答えにはとてもたどりつけそうにない。 「あああああ、やっと出会ったと思ったのに八方ふさがりかよ」 大原は悔し紛れに大きくマウスを滑らせ、ブラウザを閉じたのだった。

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