リスロマンティック。 リスロマンティックと語り口の問題

リスロマンティックと蛙化現象の違いを解説

リスロマンティック

「ぬいぐるみペニスショック」という言葉をタイムラインで見かけ、ぬいペニショックが説明する「恋愛感情を向けられると想定していない相手に恋愛感情を向けられることがもたらす嫌悪感やショック」って、蛙化現象よりもうまくリスロマンティックを説明できそうじゃないかな? とふと思いました。 でも、そもそもリスロマンティックに関するまとまった議論があまりにも少なかったので、ひとまず「リスロマンティック」に関わる概念や論説をまとめるほうが先かなあ。 というわけで以下は簡単な覚え書き。 恋愛的指向(Romantic orientation) そもそも「健全な恋愛」って何? 人間ってみんな「恋愛感情」を持っていて、他人にも「恋愛感情」を向けられたいと望んでいるものなの? という話はさておき、近年広まりつつある「恋愛的指向」(romantic orientation)という概念があります。 恋愛的にどんな対象に惹かれるか、もしくは恋愛感情をどのように抱くか/抱かないか、といった類のことを示す概念です。 重要なのは、 「恋愛的指向」は「」という概念だけでは表しきれない現象を説明しうる概念だということです。 /同性愛といった言葉が端的に示しているように、日本語において性欲と恋愛は「性愛」という単語でセットにされていました。 しかし「恋愛的指向」はそこを分けたのです。 「恋愛的指向」という概念の発明は、「性的に惹かれる対象と恋愛的に惹かれる対象は必ずしも一致しない」ことを含意しており、より細分化してものごとを表す可能性を開くものだなと思います。 リスロマンティック(Lithromantic) さてリスロマンティックは、この恋愛的指向のひとつです。 では、リスロマンティックは次のように紹介されています。 恋愛感情は抱くが、相手から恋愛感情を向けられることを望まない(もしくは必要としない)こと。 相手と相互的な関係になると恋愛感情が失われる人もいれば、相互的な関係になっても恋愛感情は失われない人もいる。 アコイロマンティック(akoiromantic)やアプロマンティック(apromantic)とも。 要するにリスロマンティックの最もミニマルな定義は、 「恋愛感情は抱くけれど、両想いになることは望まない」ことと言っていいでしょう。 これまでの「普通」の考え方でいけば、誰かを好きになったら当然その相手に振り向いて欲しいと望むものであり、「付き合いたい」といった希望を抱くものであり、そうではない形はあまり考えてこられませんでした。 リスロマンティックは、そのような「普通」の考え方からこぼれ落ちてきたありようを可視化する概念です。 アロマンティック・(Aromantic spectrum) ちなみに、では、リスロマンティックはアロマンティック・(Aromantic spectrum)に位置する恋愛的指向のひとつ、と書かれています。 アロマンティック・は、恋愛に関する従来の考え方から外れた恋愛的指向を包括する概念です。 Aロマ、グレイロマンティック、デミロマ、リスロマ、等々。 あなたもリスロマンティックかも? 12のサイン では、リスロマンティックの特徴を12個に分けて説明しています。 どれかが当てはまったらあなたもリスロマンティックかもねということです。 ・恋愛関係になる必要を感じない。 ・恋愛感情を重要なものだと感じることができない。 ・恋愛というものを嫌悪している。 互いに愛を表現しあいたいと人々が望む訳がさっぱりわからない。 ・恋愛というものを恐れている。 恋愛で相手に心を開くことが怖い。 ・ニックな関係を求めている。 ・恋愛感情を一時的に持つにも関わらず、ある段階に達すると消えてしまう。 ・身体的(性的ではないものも含む)が嫌。 恋愛的な触れ合いをしたくない。 ・二次元などのキャターが好き。 キャラから恋愛感情が返ってくることは当然ないので、キャラへ熱狂している場合は、気持ちを返されること自体を不快に感じることがある。 ・恋愛であれなんであれ、どんな種類の関係性も望んでない。 どのような種類のものであれ他人と関係を育む、と考えると、不快な気分になる。 ・付き合おうとかどう思ってるの、とか言われたら途端に好きじゃなくなっちゃう。 リスロマンティックな人は、恋愛感情が存在していることを認めたくないのかもしれない。 ・自分の恋愛感情を誰にも教えず、完全に秘密にしておきたい(告白するのが怖いからじゃなくて、相手に気持ちを返されたくないから)。 ・恋愛じゃなくて、性的に惹かれることの方が先にくる。 恋愛のパートナーよりセックスのパートナーを求めている(あとから恋愛感情が発生することもある)。 リスロマンティックにアイデンティファイしている人は、上の12個の特徴のどれか(もしくは複数)を持っている場合が多いので、自分もそうなのかなあ、と思ってる人は参考にしてみてください。 日本語圏における「リスロマンティック」 日本語版に「リスロマンティック」の項目が登場したのは2017年2月3日のようです ざっくり検索してみたところ、に項目が登場するより前に日本語で紹介された記事としては、でちらっと言及されている のと、でもちらっと言及されている のと、あとがありました。 これらの記事におけるリスロマンティックの言及は、いずれも上記のミニマルな定義以上のものではなく、単純に定義をありのままに紹介しているものです。 簡単に検索してみただけなので断定はできませんが、おおむね2014年頃から日本語圏に紹介されはじめ、ハフポスの記事で若干広まったのかなという印象です。 そしてより大々的に広がったのが2018年7月のPaletteによるツイートかな、と。 好きな人と両想いになりたいわけじゃない人もいる。 リスロマンティックについて。 164いいねされてます。 かわいい絵の漫画だったのがよかったのか、もしくは「皆さんも 気になる人やファンになった人に こういった気持ちを感じたことはありませんか?」という文言が民の心にヒットしたのか、まあとにかくこのツイートで「リスロマンティック」という言葉の認知度が結構上がったんじゃないかな。 たとえば において、リスロマンティックの項目は次のような言葉で占められています。 断定はできませんが、調べたところ後天的な要素が強いような気がします。 自尊心が低く、自分が好意をもたれることに嫌悪感を抱いてしまう、わざと嫌われるような態度を取ってしまう、などが特徴です。 (個人の見解です) また、リスロマンティックでグーグル検索すると、2018年11月22日現在、トップに前述のPaletteの編集長さんによる「」という記事が出てきます。 この記事は短いので、特に論が展開されているわけではないんですけど、リスロマンティックという言葉とともに「蛙化現象」が紹介されています。 リスロマンティックの中のある側面を説明する言葉として、「蛙化現象」が出てくるんですね。 また、実際に相手と交際することに関して抵抗がある人と無い人がおり、相手からの好意に不快感・嫌悪感を覚える「蛙化現象」という言葉も誕生しているらしい。 そして「リスロマンティックと蛙化現象の話」に引用されているツイートがこちら。 わたしこれすごく共感するんですが 他にわかる方いませんか... 今まで1人を除いて全部これなんですよね... ちなみにこれは2018年7月19日のツイートで、Palette の「リスロマンティック」ツイートの1日前のものです。 で、Palleteの編集長さんによる「リスロマンティックと蛙化現象の話」という記事が7月23日。 このふたつをセットに理解する土壌はここで出来たのかなという感じ。 リスロマンティックと過去のトラウマ また、蛙化現象以外にも、リスロマンティックは「過去のトラウマ」といったネガティブな原因と結び付けられて語られる場合があります。 たとえばという記事では、人がアコイロマンティック=リスロマンティックになる理由を6つに分けて説明しています。 ) その6つの理由とは、 ・過去にひどく傷ついた経験があり、もう恋愛なんてしたくなくなってしまったから。 ・虐待されて育ったため、人と関係を築くことが恐ろしいから。 ・高嶺の花が好きだから。 ・自分のをよくわかってないから ・自尊心が低いため、相手に気持ちを返されても自分がそれに値しないと感じてしまうから。 ・親が不仲だったりして、恋愛関係に対する良いモデルがいなくて、恋愛を良いものだと思えないから。 という感じです。 この記事では「他人に気持ちを返されたくない、ということに気づくのが早ければ早いほど、それを乗り越えやすくなるよ」と書かれており、 アコイロマンティック=リスロマンティックは完全にネガティブなもの、乗り越えるべきものとしてしか捉えられていません。 先の蛙化現象と結びつけた話もそうですが、リスロマンティック(アコイロマンティック)である「理由」を考えようとすると、どうしても過去のトラウマや幼少期の不幸といったネガティブな連想をされやすいみたいです。 「恋愛感情」の規範/語り口の問題 リスロマンティックは蛙化現象や過去のトラウマ、幼少期の悲惨な体験など、わりとネガティブな「原因」を想定されて語られる場合がある。 でもそれって問題もあるんじゃない?ということについて。 リスロマンティックって「蛙化現象」と結び付けられて語られているのをちらほら目にするんですけど、「蛙化現象」は「自己肯定感のある健全な精神であれば問題なく恋愛できるはず」という含意を結局のところ持ってしまうから「恋愛感情」の規範を強化する言説になるんじゃないかな、と思います。 もちろん、実際に「自分のことが嫌いで、嫌いなもの(=自分)を好きになる人を気持ち悪く感じてしまう」という蛙化現象に非常に説得力を感じ、リスロマンティックにを見出す人も当然たくさんいると思いますし、それはそれで個人のの問題なので他人がどうこう言う話じゃない。 ただ、リスロマンティックという恋愛感情のありようを蛙化現象とあまりにもセットで語ると、リスロマンティックという概念、というか恋愛的指向という概念が出てきた意味がなくなっちゃわない? という懸念です。 恋愛的指向という概念は、「普通」はみんな恋愛感情を持っていて、両思いになりたいと思っていて、そうじゃない人はおかしいんだ、という考え方(=「恋愛感情」の規範)ではこぼれ落ちてしまうありようを説明するものだし、その意味で「普通」の考え方なるものへのカウンターなわけですよね。 でも蛙化現象や過去のトラウマや幼少期の悲惨な虐待といった、「悲劇」にリスロマンティックという概念が回収されてしまうと、そこが抜け落ちてしまう。 端的に言うと「あなたが恋愛感情を返されることを望まない、リスロマンティックであるのは、自尊心が低いせいである。 繰り返しますが、実際に自尊心が低くて苦しんでいる人を否定したいわけでも、蛙化現象に説得力を感じつつリスロマンティックというを持っている人を否定したいわけでもありません。 ただ、「リスロマンティック=蛙化現象だから」といった形で短絡されてしまうと、リスロマンティックっていう概念がせっかく出てきた意味がなくなっちゃうよねということです。 リスロマンティックに関する言説自体が、まだまだあまりにも少ないので、杞憂っちゃ杞憂かなという気もするんですが、恋愛に関する「普通」の考え方を強化するような方向にならないといいなと思います。 それは「普通」からこぼれ落ちる人のための概念、「普通」とは何かを捉え直すための概念だと思うので。

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デミロマンティックにスコリオセクシュアル――無限にうまれる新時代のセクシュアリティ

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リスロマンティックと蛙化現象の違いを解説 恋愛にまつわる「リスロマンティック」という言葉をご存知でしょうか。 リスロマンティックとは、恋愛に関する指向や感情の一つで、「恋をしても好きになられるとすぐに冷めたり、恋愛感情を抱いても両思いの形を求めないこと」を指します(アコイロマンティックやアプロマンティックとも言います)。 恋愛ができない若者が増えていますが、この「恋愛ができない」というのは、もしかしたらリスロマンティックの場合もあるかもしれません。 リスロマンティックは、英語でLithromanticと書き、海外に存在する概念ですが、一方で、似たような恋愛指向として「蛙化現象(かえるかげんしょう)」と呼ばれる不思議な名称もあります。 蛙化現象は、日本由来の概念で、英語訳はありません。 蛙化現象の意味は、好きだった人間に行為を向けられた瞬間、相手のことを「嫌い」「キモい」と感じるようになる心理状況を指します。 蛙化現象はリスロマンティックと似ている面もあり、一部分は重なっているのですが、違いもあるので、以下、リスロマンティックと蛙化現象の違いを解説したいと思います。 リスロマンティックとは まずリスロマンティックとは、先ほども触れたように、「相手に恋愛感情を抱くものの、相手から恋愛感情を抱くことを求めない恋愛指向」を意味します。 ただ、これはざっくりとした定義で、リスロマンティック自体は幅広い範囲を占め、原因も様々です。 たとえば、リスロマンティックは以下のように種類分けができます。 しかし、この場合は、恋愛感情(「好き」という感情)はあるものの、両思いになることを求めません。 遠くから見ているだけで満足という点では、少しファンや推しに近いかもしれません。 リスロマンティックの一つが、この「好きというだけで満ち足りる」という恋心です。 原因は様々ですが、好意を向けられると途端に冷める、という指向です。 両親から虐待を受けたり、恋愛や友人関係でひどい経験をした記憶から、他人とうまく関係が築けない、不安感や恐怖感が強い、ということが原因として挙げられることもあるでしょう。 その他、普段は二次元のキャラクターやぬいぐるみなど現実ではない存在が好きで現実として想いを返される人間と恋愛に抵抗感が湧いたり、自分の恋愛感情を誰にも教えたくない秘密願望が極めて高かったり、逆に恋愛感情を抜いた肉体関係を求めるなど、数々の「恋愛できない」指向が、リスロマンティックには含まれます。 蛙化現象とは 一方、「蛙化現象(かえるかげんしょう)」という指向はどういったものなのでしょうか。 蛙化現象は、「好きだったひとから好きだと言われると途端に相手のことが嫌いになったり気持ち悪いと感じるようになること」を指します。 恋愛ができない、というのには、様々な原因があり、そもそも恋愛に全く興味がないひともいるかもしれませんが、蛙化現象は、決して恋に興味がないわけではなく、「恋はするものの、両思いになったら冷める、キモいと思ってしまう」ということを繰り返します。 なぜ、こうした指向が生まれるのでしょうか。 一つは、「自尊心の低さ」が関係していると考えられます。 自分のことが嫌いで、気持ち悪いと思っているので、その自分を好きになる相手も丸ごと嫌いになる。 あるいは、「肉体関係への嫌悪」も原因としてあげられるでしょう。 恋人になることで肉体関係に発展することを想像し、これまで理想の、ある種想像の世界の人間だったのが、極端に現実になって避ける。 加えて、これまで自分が見つめる側だったのに、両思いになって見つめられる側になることで、人間らしい生々しさを感じ、拒絶感が生じることもあります(追いかけられると急に冷める、というのも蛙化現象の一つと言えるでしょう)。 このことと関連し、恋人になって付き合えば、「思っていたのと違う」こともたくさん出てきます。 想像の世界で好きであるうちは全てが完 璧ですが、現実に彼氏になれば、むしろ一から築き上げていかなければなりません。 期待値が極端に膨れあがってしまうようなもので、 その落差で急に冷めてしまうこともあります(この辺りは二次元のキャラクターやアイドルを好きになることの延長上で恋をとらえてしまっていることに原因がある場合もあります) こうしたことを「蛙化現象」と言います。 蛙化現象という名前は、グリム童話の『かえるの王さま』に由来します(童話のあらすじや詳しい由来については以下の記事で解説)。 蛙化現象の恋愛指向を歌った、たかやんさんの『蛙化現象』では、とても分かりやすくその悩みや葛藤が表現されています。 二つの違いは それでは、「リスロマンティック」と「蛙化現象」の違いはどういった点にあるのでしょうか。 基本的には、リスロマンティックの一部にピックアップしたものを蛙化現象と言っていると考えられます。 リスロマンティックでは、最初から両思いの関係を望まないという指向から、恋愛感情をそれほど重視せず、肉体関係が中心の関係性を築く指向まで、幅広く「恋愛できない」「恋愛に興味がない」という感情をカバーします(リスロマンティイクの細かな種類は、以下の記事を参照)。 このリスロマンティックのなかには、好きになられると嫌いになる、性的な関係を嫌悪したり恐怖する、二次元的理想像として片思いの男性女性が存在するので現実に両思いになると冷める、といった状態も含まれ、この部分に特化したものを「蛙化現象」と呼んでいるのでしょう。 この言葉は英語にはなく、日本のみの区分けですが、なぜ日本でこうした区分けが生まれたかと言うと、もしかしたら日本人の自尊心の低さに関係しているのかもしれません。 海外と比較した調査では、日本の若者の「自信のなさ」が取り上げられることも多く、自殺の多さも問題となっています。 蛙化現象の原因の一つに自尊心の低さや自分のことを気持ち悪く感じる、ということがあり、日本ではリスロマンティックと言うと、この蛙化現象的な指向が多いことから、この分類が注目を集めたのではないでしょうか。 以上、リスロマンティックと蛙化現象の違いでした。

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15.リスロマンティック

リスロマンティック

「ぬいぐるみペニスショック」という言葉をタイムラインで見かけ、ぬいペニショックが説明する「恋愛感情を向けられると想定していない相手に恋愛感情を向けられることがもたらす嫌悪感やショック」って、蛙化現象よりもうまくリスロマンティックを説明できそうじゃないかな? とふと思いました。 でも、そもそもリスロマンティックに関するまとまった議論があまりにも少なかったので、ひとまず「リスロマンティック」に関わる概念や論説をまとめるほうが先かなあ。 というわけで以下は簡単な覚え書き。 恋愛的指向(Romantic orientation) そもそも「健全な恋愛」って何? 人間ってみんな「恋愛感情」を持っていて、他人にも「恋愛感情」を向けられたいと望んでいるものなの? という話はさておき、近年広まりつつある「恋愛的指向」(romantic orientation)という概念があります。 恋愛的にどんな対象に惹かれるか、もしくは恋愛感情をどのように抱くか/抱かないか、といった類のことを示す概念です。 重要なのは、 「恋愛的指向」は「」という概念だけでは表しきれない現象を説明しうる概念だということです。 /同性愛といった言葉が端的に示しているように、日本語において性欲と恋愛は「性愛」という単語でセットにされていました。 しかし「恋愛的指向」はそこを分けたのです。 「恋愛的指向」という概念の発明は、「性的に惹かれる対象と恋愛的に惹かれる対象は必ずしも一致しない」ことを含意しており、より細分化してものごとを表す可能性を開くものだなと思います。 リスロマンティック(Lithromantic) さてリスロマンティックは、この恋愛的指向のひとつです。 では、リスロマンティックは次のように紹介されています。 恋愛感情は抱くが、相手から恋愛感情を向けられることを望まない(もしくは必要としない)こと。 相手と相互的な関係になると恋愛感情が失われる人もいれば、相互的な関係になっても恋愛感情は失われない人もいる。 アコイロマンティック(akoiromantic)やアプロマンティック(apromantic)とも。 要するにリスロマンティックの最もミニマルな定義は、 「恋愛感情は抱くけれど、両想いになることは望まない」ことと言っていいでしょう。 これまでの「普通」の考え方でいけば、誰かを好きになったら当然その相手に振り向いて欲しいと望むものであり、「付き合いたい」といった希望を抱くものであり、そうではない形はあまり考えてこられませんでした。 リスロマンティックは、そのような「普通」の考え方からこぼれ落ちてきたありようを可視化する概念です。 アロマンティック・(Aromantic spectrum) ちなみに、では、リスロマンティックはアロマンティック・(Aromantic spectrum)に位置する恋愛的指向のひとつ、と書かれています。 アロマンティック・は、恋愛に関する従来の考え方から外れた恋愛的指向を包括する概念です。 Aロマ、グレイロマンティック、デミロマ、リスロマ、等々。 あなたもリスロマンティックかも? 12のサイン では、リスロマンティックの特徴を12個に分けて説明しています。 どれかが当てはまったらあなたもリスロマンティックかもねということです。 ・恋愛関係になる必要を感じない。 ・恋愛感情を重要なものだと感じることができない。 ・恋愛というものを嫌悪している。 互いに愛を表現しあいたいと人々が望む訳がさっぱりわからない。 ・恋愛というものを恐れている。 恋愛で相手に心を開くことが怖い。 ・ニックな関係を求めている。 ・恋愛感情を一時的に持つにも関わらず、ある段階に達すると消えてしまう。 ・身体的(性的ではないものも含む)が嫌。 恋愛的な触れ合いをしたくない。 ・二次元などのキャターが好き。 キャラから恋愛感情が返ってくることは当然ないので、キャラへ熱狂している場合は、気持ちを返されること自体を不快に感じることがある。 ・恋愛であれなんであれ、どんな種類の関係性も望んでない。 どのような種類のものであれ他人と関係を育む、と考えると、不快な気分になる。 ・付き合おうとかどう思ってるの、とか言われたら途端に好きじゃなくなっちゃう。 リスロマンティックな人は、恋愛感情が存在していることを認めたくないのかもしれない。 ・自分の恋愛感情を誰にも教えず、完全に秘密にしておきたい(告白するのが怖いからじゃなくて、相手に気持ちを返されたくないから)。 ・恋愛じゃなくて、性的に惹かれることの方が先にくる。 恋愛のパートナーよりセックスのパートナーを求めている(あとから恋愛感情が発生することもある)。 リスロマンティックにアイデンティファイしている人は、上の12個の特徴のどれか(もしくは複数)を持っている場合が多いので、自分もそうなのかなあ、と思ってる人は参考にしてみてください。 日本語圏における「リスロマンティック」 日本語版に「リスロマンティック」の項目が登場したのは2017年2月3日のようです ざっくり検索してみたところ、に項目が登場するより前に日本語で紹介された記事としては、でちらっと言及されている のと、でもちらっと言及されている のと、あとがありました。 これらの記事におけるリスロマンティックの言及は、いずれも上記のミニマルな定義以上のものではなく、単純に定義をありのままに紹介しているものです。 簡単に検索してみただけなので断定はできませんが、おおむね2014年頃から日本語圏に紹介されはじめ、ハフポスの記事で若干広まったのかなという印象です。 そしてより大々的に広がったのが2018年7月のPaletteによるツイートかな、と。 好きな人と両想いになりたいわけじゃない人もいる。 リスロマンティックについて。 164いいねされてます。 かわいい絵の漫画だったのがよかったのか、もしくは「皆さんも 気になる人やファンになった人に こういった気持ちを感じたことはありませんか?」という文言が民の心にヒットしたのか、まあとにかくこのツイートで「リスロマンティック」という言葉の認知度が結構上がったんじゃないかな。 たとえば において、リスロマンティックの項目は次のような言葉で占められています。 断定はできませんが、調べたところ後天的な要素が強いような気がします。 自尊心が低く、自分が好意をもたれることに嫌悪感を抱いてしまう、わざと嫌われるような態度を取ってしまう、などが特徴です。 (個人の見解です) また、リスロマンティックでグーグル検索すると、2018年11月22日現在、トップに前述のPaletteの編集長さんによる「」という記事が出てきます。 この記事は短いので、特に論が展開されているわけではないんですけど、リスロマンティックという言葉とともに「蛙化現象」が紹介されています。 リスロマンティックの中のある側面を説明する言葉として、「蛙化現象」が出てくるんですね。 また、実際に相手と交際することに関して抵抗がある人と無い人がおり、相手からの好意に不快感・嫌悪感を覚える「蛙化現象」という言葉も誕生しているらしい。 そして「リスロマンティックと蛙化現象の話」に引用されているツイートがこちら。 わたしこれすごく共感するんですが 他にわかる方いませんか... 今まで1人を除いて全部これなんですよね... ちなみにこれは2018年7月19日のツイートで、Palette の「リスロマンティック」ツイートの1日前のものです。 で、Palleteの編集長さんによる「リスロマンティックと蛙化現象の話」という記事が7月23日。 このふたつをセットに理解する土壌はここで出来たのかなという感じ。 リスロマンティックと過去のトラウマ また、蛙化現象以外にも、リスロマンティックは「過去のトラウマ」といったネガティブな原因と結び付けられて語られる場合があります。 たとえばという記事では、人がアコイロマンティック=リスロマンティックになる理由を6つに分けて説明しています。 ) その6つの理由とは、 ・過去にひどく傷ついた経験があり、もう恋愛なんてしたくなくなってしまったから。 ・虐待されて育ったため、人と関係を築くことが恐ろしいから。 ・高嶺の花が好きだから。 ・自分のをよくわかってないから ・自尊心が低いため、相手に気持ちを返されても自分がそれに値しないと感じてしまうから。 ・親が不仲だったりして、恋愛関係に対する良いモデルがいなくて、恋愛を良いものだと思えないから。 という感じです。 この記事では「他人に気持ちを返されたくない、ということに気づくのが早ければ早いほど、それを乗り越えやすくなるよ」と書かれており、 アコイロマンティック=リスロマンティックは完全にネガティブなもの、乗り越えるべきものとしてしか捉えられていません。 先の蛙化現象と結びつけた話もそうですが、リスロマンティック(アコイロマンティック)である「理由」を考えようとすると、どうしても過去のトラウマや幼少期の不幸といったネガティブな連想をされやすいみたいです。 「恋愛感情」の規範/語り口の問題 リスロマンティックは蛙化現象や過去のトラウマ、幼少期の悲惨な体験など、わりとネガティブな「原因」を想定されて語られる場合がある。 でもそれって問題もあるんじゃない?ということについて。 リスロマンティックって「蛙化現象」と結び付けられて語られているのをちらほら目にするんですけど、「蛙化現象」は「自己肯定感のある健全な精神であれば問題なく恋愛できるはず」という含意を結局のところ持ってしまうから「恋愛感情」の規範を強化する言説になるんじゃないかな、と思います。 もちろん、実際に「自分のことが嫌いで、嫌いなもの(=自分)を好きになる人を気持ち悪く感じてしまう」という蛙化現象に非常に説得力を感じ、リスロマンティックにを見出す人も当然たくさんいると思いますし、それはそれで個人のの問題なので他人がどうこう言う話じゃない。 ただ、リスロマンティックという恋愛感情のありようを蛙化現象とあまりにもセットで語ると、リスロマンティックという概念、というか恋愛的指向という概念が出てきた意味がなくなっちゃわない? という懸念です。 恋愛的指向という概念は、「普通」はみんな恋愛感情を持っていて、両思いになりたいと思っていて、そうじゃない人はおかしいんだ、という考え方(=「恋愛感情」の規範)ではこぼれ落ちてしまうありようを説明するものだし、その意味で「普通」の考え方なるものへのカウンターなわけですよね。 でも蛙化現象や過去のトラウマや幼少期の悲惨な虐待といった、「悲劇」にリスロマンティックという概念が回収されてしまうと、そこが抜け落ちてしまう。 端的に言うと「あなたが恋愛感情を返されることを望まない、リスロマンティックであるのは、自尊心が低いせいである。 繰り返しますが、実際に自尊心が低くて苦しんでいる人を否定したいわけでも、蛙化現象に説得力を感じつつリスロマンティックというを持っている人を否定したいわけでもありません。 ただ、「リスロマンティック=蛙化現象だから」といった形で短絡されてしまうと、リスロマンティックっていう概念がせっかく出てきた意味がなくなっちゃうよねということです。 リスロマンティックに関する言説自体が、まだまだあまりにも少ないので、杞憂っちゃ杞憂かなという気もするんですが、恋愛に関する「普通」の考え方を強化するような方向にならないといいなと思います。 それは「普通」からこぼれ落ちる人のための概念、「普通」とは何かを捉え直すための概念だと思うので。

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