映画 ゲット アウト ネタバレ。 『ゲット・アウト』の謎をネタバレ解説!なぜフラッシュで鼻血が出た?【ジョーダン・ピール監督】

映画『ゲットアウト』評価は?ネタバレ感想考察あらすじ/伏線の考察!GetOutの意味?黒人差別?

映画 ゲット アウト ネタバレ

かるび( です。 昨年、アメリカでは年度末の各種賞レースも賑わした映画 「ゲット・アウト」。 低予算で製作されたホラー・サスペンス映画ですが、全米では初登場第1位を獲得するなど大ヒット。 さらに、 アカデミー賞「脚本賞」を受賞して話題になりました。 しかし、日本では見事に不発。 映画マニアの間ではそれなりの話題となったものの、興収はわずかに1. 5億円程度と振るわず。 「ブレードランナー2049」等、同時期に公開された他作品との兼ね合いで、ほとんど話題にならずすぐに上映打ち切りになりました。 僕も気づいたら見逃してしまっていたので、ようやく配信・レンタルに回った2018年春、自宅で見たのですが、これが物凄く面白かったのです! これは感想を残しておきたい!と思ったので、新作映画ではありませんが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。 できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。 引用: 元々はテレビ系喜劇俳優の人です。 ハリウッド作品でも、過去作はアニメ作品の声優や、コメディでの出演はありましたが、 ホラー映画を監督として手がけるのは正真正銘今回が始めて。 まさに畑違いへの挑戦といった感じです。 だからなのか、彼に与えられた制作費はわずか日本円にして5億円程度と言われています。 何十億、何百億円かけてビッグタイトルがバンバン作られるハリウッドにおいては、慎ましいほどの インディペンデント系・低予算映画なのです。 そんな低予算作品かつ初監督作品であるにもかかわらず、こんなに緻密な脚本・演出で、社会性に富んだ傑作を作り上げてしまうのだから本当に脱帽です。 全米初登場1位を記録すると、その勢いは世界中に飛び火。 全世界で約270億円程度のヒットを飛ばし、アカデミー賞脚本賞まで獲得してしまったのでした。 いやほんと、ジョーダン・ピール監督も凄いですが、今年も 「レディ・バード」「スリー・ビルボード」といった、 インディ系映画でも傑作が次々と生み出されるハリウッドの懐の深さも改めて感じさせてくれました。 なお、予告編とは別に、 監督やキャスト陣が公開トークのQAセッションにて作品を解説してくれているわかりやすい動画がありますので、こちらも映画と一緒に見ておくとより作品世界を深く理解できると思います。 2.映画「ゲット・アウト」主要登場人物・キャスト クリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ) 引用:母親がウガンダ出身という経歴を買われ、世界的に大ヒットした映画 「ブラックパンサー」では見事なアフリカ英語を駆使し、ボーダー族の長、ウカビを熱演。 その他待機作として、スティーブ・マックイーン監督の 「Widows」(2018年公開予定)など。 ニヤッと笑った人懐っこいタレ目の笑顔から、驚いた引きつり顔まで、非常に表情の豊かな黒人若手俳優です。 ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ) 引用:どちらかというと、TVを主戦場とするTVドラマ俳優。 代表作は、世界的にも大人気のドラマ「GIRLS」でのマーニー・マイケルズ役です。 今回の「ゲットアウト」は、ジョーダン・ピール監督同様、映画初デビューとなります。 果たして今回の役をきっかけに、大きく映画俳優へと羽ばたけるか。 今後の展開に要注目です。 3.途中までの簡単なあらすじ 黒人のプロカメラマンであるクリス・ワシントンには、付き合って5ヶ月目になる恋人がいた。 ローズ・アーミテージという美しい白人女性だ。 彼らは将来の結婚への布石として、ローズの父、ディーン・アーミテージに会うことにした。 未だ根強く人種差別が残るアメリカ社会では、黒人男性と白人女性のカップルは一般的ではない。 彼らは自分たちが父や家族に受け入れられるか心配だった。 自宅に到着すると、アーミテージ家の人間は彼ら二人に理解を示し、逆に気持ち悪いくらい歓待してくれた。 アーミテージ家の二人の黒人使用人がいた。 彼らの仕草や立ち振舞を見ていると、クリスには挙動不審に見えて気味が悪かった。 慣れない環境下、若干の違和感を感じていたクリスは、その晩寝付けなかった。 外の空気を吸おうと館の外に出てみると、クリスは深夜にすごい勢いでジョギングをする使用人に遭遇した。 部屋に戻ると1Fではまだローズの母、ミッシーが起きていた。 彼は勧められるままにミッシーの催眠術にかけられてしまう。 意識の奥底に自らが閉じ込められるイメージを見ていた。 が、次の瞬間、気づいたら翌朝ベッドで目を覚ます自分がいた。 翌日は、アーミテージ家でローズの父、ディーンの知り合いを集めたパーティが行われた。 パーティでのゲストは白人の富裕層ばかりで、クリスは居心地が悪かった。 しかし、ゲストの中に1人だけローガンという黒人男性がいた。 クリスは、ローガンに話しかけたが、その黒人らしからぬ立ち振舞いに不信感をおぼえた。 パーティで特にクリスに話しかけてきたのは、盲目の美術商、ジム・ハドソンだった。 元カメラマンだったジムは、才能の限界を感じてから画廊オーナーとなったのだが、そこで彼は失明してしまったのだという。 ジムは、前からクリスの作品を高く評価していたのだった。 パーティが終盤になると、ある事件が起こった。 ローガンをスマホで撮影しようとした時、誤作動したフラッシュに過剰反応したローガンが、取り乱してクリスに襲いかかってきたのだ。 クリスは、混乱してその場をローズと離れた。 しかし、クリスが離れている間、恐るべきことが起こっていた。 なんとディーンは、ビンゴ大会を装い、クリスを人身売買のオークションにかけていたのだった。 競り落としたのは、盲目の美術商・ジムだった。 気味が悪くなったクリスは、パーティが終わると、ローズを促して帰ろうとしたが、ローズはクリスに車のキーを渡そうとしなかった。 そしてクリスは催眠術によって眠らされてしまい、地下室に監禁されてしまった。 クリスが地下室で目覚めると、彼はようやく何が起こっていたのかを理解した。 ローズも含め、アーミテージ家によって彼は人身売買の材料として誘拐されたのだ。 両手を縛られ、ソファに座らされたクリスには、とんでもない運命が待ち受けていたのだった・・・。 果たしてクリスは、絶体絶命のこの窮地を脱出することができるのかーーー。 スポンサーリンク 4.映画内容の簡単なレビュー!(ネタバレあり感想・評価) 徹底的に練り込まれた脚本・演出!見逃していいシーンは1つもなし! 本作は、まず純粋にストーリーそのものが面白いです。 序盤~中盤こそ、いわゆる低予算系脱出・脱獄ホラー映画に典型的な展開で進みます。 すなわち、許嫁のローズと結婚前の挨拶にアーミテージ家を訪れた黒人の主人公・クリスが、アーミテージ家で様々な不可解な出来事に遭遇するうち、囚われの身になっていくという展開ですね。 笑いながら泣く!怖すぎる使用人ジョージナ 引用: 中盤までは、主人公クリスが、アーミテージ家のメンバーや、そのゲスト達の言動の異常性を目の当たりにするたび、鑑賞者である我々もなんとなくゾクゾクッとする薄ら寒さを感じ・・・といった感じで、ホラー映画らしい気味の悪さが積み重なっていきます。 いわゆるサイコパスに追い詰められる、密室モノ猟奇殺人系なのかな・・・?と思って見ていると、終盤の入り口に差し掛かったあたりからがすごかった!ここから、意外性あふれる怒涛の展開へ進んでいくんです。 実は、許嫁のローズも含め、 アーミテージ家のメンバーは家族ぐるみで伝統的に黒人の拉致誘拐・人身売買に手を染めており、希望する富裕層の白人に対して、違法な脳移植手術を行っていたのですね。 何という展開・・・。 敢えて他作品と比較するならば、 僕が感じたこの作品の「怖さ」とは、よくある陰謀論などで紹介される、白人エリート層の秘密結社的な気持ち悪さなんですよね。 お金も名誉も満たされた、富裕層の白人が最後に「不老長寿」「永遠の命」を獲得しようとして、誰も見てない秘密の会合で、非人道的・非倫理的な行為に手を染める。 その倒錯した価値観に染まった大人たちは、おぞましくて、ぞくぞくするような怖さがありました。 そして、絶体絶命のところまで追い詰められたクリス。 いよいよやられちゃってバッドエンドを迎えるのか?!と鑑賞者が絶望しかけた時、クリスの反撃が始まります。 クリスは、知恵と機転を使って拘束を解き、アーミテージ家の人間を一人ずつ容赦なくぶっ潰して、家を出ていきます。 最後、クリスの怒涛の反撃がケレン味たっぷりで爽快! 引用: このラストシーンの胸のすくような描写は、まさに爽快! アーミテージ家の人間が「野獣」と彼を評したように、彼の眠っていた獣性が解き放たれたような大暴れは、ケレン味たっぷりでスカッとする展開でもありました。 このように、最初から最後まで、とにかくあらゆる場面で画面にぐぐっと引きつけられるような、そんな面白さがある作品でした。 現代まで続く「黒人差別」を丁寧に、歴史的観点も織り交ぜて描いた 本作が優れているのは、練り込まれた脚本に加え、1本「黒人差別」という筋の通ったテーマ性がしっかり設定されていることです。 作品の中で重層的に、執拗に繰り返し繰り返し表現されているのです。 ただ単に、現代のアメリカ社会での「黒人差別意識」をトレースしているだけにとどまらず、 きっちりと歴史的な文脈を踏まえ、「黒人差別の歴史」も随所で表現しようと試みているのが凄いのです。 引用: 例えば、ローズの母親ミッシーがクリスを催眠術にかける時に使ったアイテム 「紅茶」や地下室に拘束されたクリスが破れたアームレストの中から掴んだ 「綿花」。 両者とも、 長年、白人がプランテーション農業において、奴隷労働を強いてきた作物の代表格であり、アメリカ有史以来の「黒人差別」の歴史をさらっと踏まえたメタファーが試みられています。 さらに、アーミテージ家を訪問したクリスがテラスで振る舞われた 「アイスティ」。 白ワインとかコーヒーとかじゃなくて、あれっ、なんだろうこの飲み物?とか思いませんでしたか? 調べてみると、アメリカ南部では、特にシロップを沢山入れて味わうので「スイートティー」とも呼ばれるこの飲み物は、19世紀からアメリカ南部の白人家庭で伝統的に飲まれてきたアメリカ人のソウルフードの一つなのだそうです。 しかし、本作では、同時に黒人奴隷たちが彼らの農場やキッチンで働かされていた時代をも強く想起させる演出として見事な効果を発揮していました。 このように、 映画全体のストーリーにとどまらず、各場面の演出や各キャラクターの立ち振舞ひとつひとつに至るまで、アメリカにおける黒人差別を徹底的に描き出した細やかさには舌を巻かされました。 1度見て終わらすな!2度目の鑑賞からが本当に面白い! そして、この作品は、1回で終わりにせず、是非2周目以降のリピートを強くおすすめしたいのです。 一度ストーリーの全容を把握した後、もう一度最初から各キャラクターの何気ない仕草やセリフ、服装などをよーく観察してみて下さい。 もう、登場人物の一挙手一投足に、 「ああ、、そういう意味があったのか!」と符に落ちますので。 たとえば、いくつか例を挙げてみましょう。 まず、序盤のシーンから。 アーミテージ家へ向かう道中、車を運転するのはクリスではなく、恋人、ローズでした。 これって、違和感を感じませんでしたか? 引用: クリスも、ラストシーンで車の免許は普通に持っているのですが、敢えて、ローズが運転するのですね。 それは、クリスがアーミテージ家にとって「出荷前の商品」だからなのです。 オークションを前に、商品価値を落としたくない。 だから、ローズが大事に運ぶのです。 また、アーミテージ家の家族たちが、クリスに執拗に禁煙を迫るのも同じ理屈ですよね。 あるいは、アーミテージ家でクリスが出会う奇妙な黒人たち。 彼らは、全員白人の脳を移植手術されているのですが、その証拠に、彼らは全員帽子かかつらをかぶっているのです。 つまり、手術痕の残る地肌を見えないように巧みに隠しているのですよね。 ・・・なるほど!と思いました。 引用: さらに面白かったのは、アーミテージ家へやってきたゲストたちの服装です。 この時、ローズも含め、クリス以外は全員、服装や持ち物のどこかしらに「赤」が入っています。 これに対して、クリスだけが「青」系の服装なのですね。 そう言えばアメリカの2大政党も白人支持者の多い共和党のテーマカラーは「赤」で、黒人支持者の多い民主党のテーマカラーは「青」でした。 こうしたところにさらっと政治的なスタンスも入れてきているのがまた面白いです。 その他、映画の隅から隅まで本当に仕掛けが多く、演出やストーリーに多重的な意味やメタファーが仕掛けられていることに気づきます。 本当に初監督作品なの?と思えるほど、読み解き甲斐のある作品でした。 是非、みなさんも探してみてくださいね。 内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。 予めご了承下さい。 また、疑問点をまとめるにあたり、東宝東和から公式動画として提供されている、評論家・町山智浩さんの試写会トークセッションが非常に役立ちました。 ネタバレを含む、非常に納得感のある解説が聞けます、まずはこちらを是非チェックしてみて下さい! 疑問点1:タイトル「ゲット・アウト」の意味とは 引用: 直訳すると 「Get Out」とは「逃げ出せ!」という意味ですね。 劇中でも、ストーリー中盤、アーミテージ家への唯一の黒人の招待者、 ローガンが錯乱状態になった時、クリスに向かって「ゲットアウト!」と叫ぶセリフでも強調されていますね。 直接的には、文字通り、アーミテージ家に囚われたクリスが、屋敷から脱出するストーリーそのものを直接表現していると思われます。 さらに深読みすると、人種差別意識が強いアメリカ社会そのものから、「脱出して自由になりたい!」という黒人の悲痛な叫びである、と取ることもできますね。 疑問点2:主人公、クリスの職業は? クリスの職業は、プロのカメラマンです。 映画中、キャノンの高級デジタル一眼レフを肌身離さず持ち歩く様子からもよくわかりますね。 クリスを競り落としたハドソン画廊のオーナーも、クリスの作風を 「力強く、残忍で物悲しいイメージ」と高く評価していましたね。 恐らく、幼少時に母親と生き別れた強烈な原体験が、彼の芸術性を支えているのでしょう・・・。 疑問点3:ローガンの正体とは? 引用: アーミテージ家のパーティで出会った、いわゆる黒人らしからぬ振る舞いをするローガン。 クリスの「黒人特有の」グータッチに対して、普通に握手で返す不自然さ。 クリスが挨拶した時、彼は老婦人の物静かな年老いた夫という感じの立ち振舞でしたね。 しかし、クリスが写メを撮った時、切り忘れていたフラッシュを浴びると、錯乱状態になり、クリスに襲いかかってきました。 引用: 彼の正体は、少し前に行方不明となっていたアンドレ・ヘイワースでした。 ローガンの写メを見たロッドが、暫く前に失踪した知り合いに似ていると考え、ネットで調べた結果判明します。 つまり、彼もまたローズのハニートラップにかかり、アーミテージ家で白人たちの顧客に売り飛ばされていたのですね。 疑問点4:アーミテージ家の正体とは? 引用: アーミテージ家は、「知能」や「体力」に優れた黒人を誘拐し、ローズの祖父が編み出した「凝固法」という脳外科手術のメソッドを活用し、「白人」の顧客たちの脳を移植する、違法な人身売買ビジネスを家族ぐるみで行っていました。 その役割分担とは、以下の通りです。 娘(ローズ):誘拐担当 色仕掛けでターゲットに近づき、結婚詐欺で黒人男性を自宅へと招き入れる。 非常時は、逃げ出そうとするターゲットを、猟銃で仕留めるスナイパーの役割も務める 息子(ジェレミー):誘拐担当 柔術でターゲットを締め上げ、意識を失わせて誘拐し、自宅へと引き入れる。 また、父親の実施する脳移植手術のアシスタントを務める。 母親(ミッシー):催眠術担当 心理療法士で、催眠術を得意とする。 本作では、夜に眠れないクリスを誘い出し、紅茶のカップを繰り返しかき混ぜる音と動作で、催眠状態へと誘導した。 父親(ディーン):オークション・手術担当 顧客を集め、ビンゴ大会を偽装したクリスの人身売買オークションを実施。 また、実際の脳移植手術を実施する担当でもある。 疑問点5:クリスを競り落とした老人の正体とは? 引用:映画「ゲット・アウト」DVD本編映像より クリスを競り落とした老人は、ハドソン画廊のオーナー、ジム・ハドソンです。 彼は、失明する前、野外専門のカメラマンとして活動していました。 しかし才能の限界を感じ、美術商に転じたのでした。 そこで成功を収めたのですが、皮肉なことに今度は失明してしまったのです。 そこで、ジムは自らが失った「視力」とクリスの世界を捉える独特のセンスを自らのものにしたいため、彼を宿主にしたいと願い、クリスをオークションで競り落としたのでした。 疑問点6:クリスはなぜ洗脳を解き、脱出することができたのか? 引用:映画「ゲット・アウト」DVD本編映像より 映画を注意深く見ているとわかるのですが、地下室で催眠状態から一旦覚めた クリスは、夢中でアームレストにしがみついているうちに、アームレストを覆う毛皮が破れ、中からクッション材としての「綿花」が出てきていることに気づいたのです。 これを両耳に詰めることによって、クリスは、ローズの母ミッシーが仕掛ける、 紅茶のカップをかき混ぜる音を遮断することで、 これ以上催眠術にかからないようにしたのですね。 ちなみに、彼は敵を油断させるため、ジェレミーが室内に入ってくるまでの間、わざと催眠にかかったふりをして目を閉じていました。 疑問点7:「鹿」は何のメタファーだったのか? 引用: 本作で、「鹿」は3度象徴的な登場をします。 1回目は、アーミテージ家へ向かう道中で誤ってハネてしまった「死体」として。 2回目は、地下室の壁に掛けられたオスの剥製との対面。 そして、3回目はその剥製を「武器」として使って、ディーンを倒すシーンです。 この「鹿」には重層的にメタファーがかけられていると見ることができます。 1つは、「鹿」=「黒人」という見立てです。 歴史的に黒人は搾取され、痛めつけられてきました。 現在は、美しい鹿の剥製のように、表面上は人種差別は「なくなった」ように繕われていますが、実際はまだまだ人々の心の中に根強く差別意識は残っていますよね。 クリスが剥製を使ってディーンを殺すシーンは、そんな現状に対して、黒人たちの怒りが爆発しているのだ、と見ることもできますね。 もう1つは、「鹿」=「クリス」と見ることもできますよね。 すなわち、鹿が画面に登場するシーンと、クリスのたどる運命が連動しているのです。 アーミテージ家へ向かう途中で殺された死体は、クリスの運命を暗示しているようですし、地下室の剥製は、このあとクリスが白人の脳を移植手術され、たんなる入れ物になろうとしていることを暗示しています。 そして、最後に剥製のツノがディーンを倒すシーンは、このあとクリスがアーミテージ家を全員やっつけることを暗示しているのですね。 疑問点8:クリスが脱出する車の中、助手席に置いてあった「仮面」とは何の意味があったのか? この鉄仮面は、ローズの弟、ジェレミーが誘拐する時に、顔を隠すため使用していた「誘拐用の道具」ですね。 映画冒頭で、閑静な白人居住地域に紛れ込んでしまったある黒人男性が、車から下りてきた仮面をかぶった男に誘拐されるシーンがありましたが、この仮面の男こそがジェレミーだったのです。 また、よく見ると、このクリスが脱出に使った白い車も、映画冒頭で映し出される白い車と一致しています。 映画ラストシーン近くになって、一見、本編とは関係のなさそうに見えた映画序盤で男が襲われるシーンと本編のつながりをワンショットで鑑賞者に悟らせるという、非常にクレバーな演出でした。 疑問点9:ラストシーン・結末の考察 拘束されていた古椅子のアームレストのクッション材として使われていた綿花を耳に詰めることで、ミッシーの催眠術を回避した クリスは、ジェレミー、ミッシー、ディーンと、アーミテージ家のメンバーを次々倒し、外に止めてあった白いスポーツカーで屋敷を脱出しようとします。 引用: そして追いすがってきた男性の使用人(=祖父)をカメラのフラッシュで錯乱状態に追い込み自殺させると、最後は猟銃を手に追ってきたローズを倒したところで、 親友のロッドが迎えに来てくれたところで、映画は幕を閉じます。 ジェレミーが柔術で襲いかかってきたり、実はジェレミーこそが、冒頭で登場した高級住宅街での誘拐犯であることが判明する仕掛けが用意されていたりと、ラストシーンにも見どころが満載。 引用: そして、よく見るとローズもラストシーンだけ髪型が違うんですよね。 クリスの恋人モードだった時は、髪を下ろして女性らしさを全面に出していましたが、 ラストシーンでは猟銃を手にオールバックの出で立ちで完全に戦闘モード。 狂気が宿った目つきが怖かったです。 ローズをしめ殺して、アーミテージ家全員を倒した直後にクリスの前に現れた警察車両を見て、一瞬「ここで逮捕されてしまうのか、きついな・・・」と思ったら、車からは親友のロッドが下りてくるラストショットも、最後までハラハラさせてくれる演出で秀逸でした。 疑問点10:もう一つのエンディングとは すでに発売されているDVD・ブルーレイといった円盤には収録されているのですが、 本作には陽の目を見なかったアナザー・エンディングがあります。 そのエンディングとは、クリスが最後にローズをアーミテージ家の屋敷近くの路上で殺して、車で立ち去ろうとするまさにその時、親友・ロッドではなく、警察が現れてクリスを逮捕してしまうという筋立てです。 その後、クリスは収監され、半年後にロッドと面会をするシーンで静かに終わっていくバッドエンドとなります。 ジョーダン・ピール監督によると、敢えて精神的に堪えるバッドエンドにすることで、 「未だに黒人差別は存在しているのだ」ということを強烈に観客へと印象づけたかったとのこと。 ただし、このエンディングだとあまりに救いがないので、採用を見送ったのだとか。 疑問点11:続編はあるの? 当初は本作はこれで完結と思われていました。 しかし、2018年2月、アメリカの各種Webメディアで、「ジョーダン・ピール監督自身が続編制作へ前向き」と一斉に報道がありました。 ただ、現状ではアイデアや構想、スケジュール等は全く決まっていません。 単に「前向き」「やりたい」と監督自身が表明した段階です。 現在、ジョーダン・ピール監督は、ユニバーサル・ピクチャーズと契約し、2019年上半期に公開予定の別の2作目(タイトル、内容不明)を撮影中とのこと。 だから、もし「ゲットアウト2」または、「ゲットアウトユニバース」みたいなものが実現するとしても、当面先の展開になるのでしょうね。 これだけの練り込んだオリジナルコンテンツを作れる力量のある監督なので、いくらでも話は広がっていくと思います。 映画でもドラマでもいいので、是非もう少しこの世界観でのお話を見てみたい気もしますね。 7.まとめ 映画「ゲットアウト」は、日本で劇場上映された時はそれほど話題になりませんでしたが、 低予算のインディーズ作品ながら、脚本・演出とも非常によく練り込まれた素晴らしい作品でした。 良い作品は、2回目、3回目と見返すと、さらにじわじわと面白さが染み渡るように体感できるといいますが、本作はまさにそういった「スルメ作品」の代表格。 僕も、何度も何度も手元で確認するたび、ディテール描写や精巧に仕掛けられたメタファーの数々に嘆息させられました。 おすすめなので、是非何度も見返してみてくださいね。 それではまた。 かるび 8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など 「ゲットアウト」DVD・ブルーレイ.

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映画「ゲットアウト 」ネタバレあらすじと結末・みんなの感想

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米国社会に潜む黒人差別問題をテーマにした異色のホラー映画『ゲット・アウト』。 自らも黒人であり、コメディアンとして活躍しているジョーダン・ピール監督による本作は、低予算ながらも、アメリカでは公開初登場で興行収入ランキング1位を記録。 第90回アカデミー賞では主要4部門にノミネートし、そのうち脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げました。 ホラー映画でありながらコメディタッチを取り入れ、多くの伏線を散りばめた社会風刺色の強い作品となっています。 この記事では、それらの伏線とその回収を解説し、そのなかから監督が本作に込めたメッセージを紐解いていきます。 映画の主人公は黒人のカメラマン、クリス。 彼は白人の恋人ローズの実家、アーミテージ家へ挨拶に行くことになります。 彼は、白人の家庭を訪れることを不安に思っていました。 しかしローズの両親からは、猛烈な歓迎を受けて一安心。 彼女の家には黒人の使用人ジョージーナと庭師のウォルターがいました。 夜になり、クリスは彼らが庭を全力疾走したり、窓ガラスに映った自分の姿を見つめたりと奇妙な行動をとっているのを目撃します。 翌日、クリスはローズの亡き祖父を称えるパーティに参加しますが、招待客は白人ばかり。 彼らはやたらとクリスを褒め、身体に触ったり、ゴルフのスウィングフォームを見せろ、などと不可解なことばかり言います。 その中に黒人の青年ローガンを見つけ、思わず携帯で彼の写真を撮ったクリス。 するとローガンは鼻血を流し始め、クリスに向かって「出ていけ!」と襲いかかってきました。 ネタバレを見る 不可解な出来事がつづき、なにかがおかしいと感じたクリスはローズにもう帰ろうといいます。 そのころ庭では不可解なオークションが行われており、盲目の画商ジムが商品を落札しました。 クリスがローガンの写真を友人のロッドに送ると、彼はローガンは行方不明のアンドレという男ではないかと疑います。 荷造りをつづけるクリスは、ローズの部屋でローガンを含む複数の黒人男性とジョージーナらと彼女が親しげに映った写真を発見。 ローズの行動に疑いを持ったクリスは急いで家を出ようとしますが、ローズは彼に車の鍵を渡さず、彼女の弟ジェイミーに襲いかかられ、母ミッシーに催眠術で眠らされてしまいます。 クリスは目を覚まし、自分が椅子に縛り付けられていることに気がつきます。 そこで彼は、黒人の肉体に白人の脳を移植して永遠の精神・生命を手に入れるという手術を、アーミテージ一家が祖父の代からつづけてきたことを知ります。 ローズは黒人を恋人として騙し、その材料にしていたのです。 ジムは視力を取り戻すためクリスの肉体を落札したのでした。 ネタバレを見る 催眠術の合図となるカップをかき混ぜるスプーンの音を聞かないため、クリスは耳に椅子の肘掛けから取った綿を詰めました。 彼が眠っていると思いこんで拘束をときに来たジェレミー、ミッシー、そしてローズの父ディーンを倒して自力で脱出を試みます。 車で逃げようとするクリスに、ローズの祖母の脳を移植されたジョージーナと、祖父の脳を移植されたウォルターが襲いかかります。 車内でクリスともみ合いになったジョージーナは木にぶつかって死亡。 そこにローズとウォルターが追いつきますが、クリスのカメラのフラッシュによって一瞬我に返ったウォルターは、クリスではなくローズを向かってライフルを撃ちます。 しかしローズの祖父の意識が復活すると、孫娘を撃った罪悪感から自分の頭を打ち抜いてしまいました。 撃たれたものの生きていたローズは、ライフルでクリスを撃とうとしますが、彼は抵抗してローズの首を絞めます。 しかし彼女を殺すことはできず手を緩めると、そこへパトカーに乗ってロッドが現れます。 こうしてクリスはアーミテージ家を脱出し、無実の罪で裁かれることもありませんでした。 人種間の対立と共存をテーマにした本作が面白いのは、「差別主義」の描写が違和感とミスリードを誘い、すべてが明らかになったとき、観客も自分の中にある差別意識に気付かされるところです。 たとえば映画冒頭の鹿を轢くシーンでは、運転していたのはローズだったにもかかわらず、駆けつけた白人警官はクリスに免許証の提示を要求し、ローズはそれに反発しました。 アメリカでは、こうした状況におかれることはよくあることらしいのですが、ローズの真意を知ったとき「よくある」と思っていた自分の差別意識に気付かされるのです。 このシーンだけを観れば、ローズが人種差別に反対しているとみることができます。 しかし実際は、これから行方不明になる予定のクリスと自分が一緒にいたことが警察の記録に残ってしまうことを懸念しての行動だったのです。 監督のジョーダン・ピールは、黒人と白人の両親を持つ自身のアイデンティティを活かして、そのどちらの人種も興味を持ち、ショックを受ける内容にしたいと考えていたのだとか。 人種差別はアメリカでは切実な、非常に身近な問題で、リベラルを自称する人々や有色人種の人々は、自分は差別主義者ではないと考えています。 しかし、本作に大量に仕込まれた伏線やミスリードが、観客の無知や差別的な考えを浮き彫りにし、映画の内容以上に自分の隠れた差別意識にショックを受ける仕掛けになっています。 それに気づかせること自体が監督の目的でした。

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映画『ゲットアウト』評価は?ネタバレ感想考察あらすじ/伏線の考察!GetOutの意味?黒人差別?

映画 ゲット アウト ネタバレ

かるび( です。 昨年、アメリカでは年度末の各種賞レースも賑わした映画 「ゲット・アウト」。 低予算で製作されたホラー・サスペンス映画ですが、全米では初登場第1位を獲得するなど大ヒット。 さらに、 アカデミー賞「脚本賞」を受賞して話題になりました。 しかし、日本では見事に不発。 映画マニアの間ではそれなりの話題となったものの、興収はわずかに1. 5億円程度と振るわず。 「ブレードランナー2049」等、同時期に公開された他作品との兼ね合いで、ほとんど話題にならずすぐに上映打ち切りになりました。 僕も気づいたら見逃してしまっていたので、ようやく配信・レンタルに回った2018年春、自宅で見たのですが、これが物凄く面白かったのです! これは感想を残しておきたい!と思ったので、新作映画ではありませんが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。 できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。 引用: 元々はテレビ系喜劇俳優の人です。 ハリウッド作品でも、過去作はアニメ作品の声優や、コメディでの出演はありましたが、 ホラー映画を監督として手がけるのは正真正銘今回が始めて。 まさに畑違いへの挑戦といった感じです。 だからなのか、彼に与えられた制作費はわずか日本円にして5億円程度と言われています。 何十億、何百億円かけてビッグタイトルがバンバン作られるハリウッドにおいては、慎ましいほどの インディペンデント系・低予算映画なのです。 そんな低予算作品かつ初監督作品であるにもかかわらず、こんなに緻密な脚本・演出で、社会性に富んだ傑作を作り上げてしまうのだから本当に脱帽です。 全米初登場1位を記録すると、その勢いは世界中に飛び火。 全世界で約270億円程度のヒットを飛ばし、アカデミー賞脚本賞まで獲得してしまったのでした。 いやほんと、ジョーダン・ピール監督も凄いですが、今年も 「レディ・バード」「スリー・ビルボード」といった、 インディ系映画でも傑作が次々と生み出されるハリウッドの懐の深さも改めて感じさせてくれました。 なお、予告編とは別に、 監督やキャスト陣が公開トークのQAセッションにて作品を解説してくれているわかりやすい動画がありますので、こちらも映画と一緒に見ておくとより作品世界を深く理解できると思います。 2.映画「ゲット・アウト」主要登場人物・キャスト クリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ) 引用:母親がウガンダ出身という経歴を買われ、世界的に大ヒットした映画 「ブラックパンサー」では見事なアフリカ英語を駆使し、ボーダー族の長、ウカビを熱演。 その他待機作として、スティーブ・マックイーン監督の 「Widows」(2018年公開予定)など。 ニヤッと笑った人懐っこいタレ目の笑顔から、驚いた引きつり顔まで、非常に表情の豊かな黒人若手俳優です。 ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ) 引用:どちらかというと、TVを主戦場とするTVドラマ俳優。 代表作は、世界的にも大人気のドラマ「GIRLS」でのマーニー・マイケルズ役です。 今回の「ゲットアウト」は、ジョーダン・ピール監督同様、映画初デビューとなります。 果たして今回の役をきっかけに、大きく映画俳優へと羽ばたけるか。 今後の展開に要注目です。 3.途中までの簡単なあらすじ 黒人のプロカメラマンであるクリス・ワシントンには、付き合って5ヶ月目になる恋人がいた。 ローズ・アーミテージという美しい白人女性だ。 彼らは将来の結婚への布石として、ローズの父、ディーン・アーミテージに会うことにした。 未だ根強く人種差別が残るアメリカ社会では、黒人男性と白人女性のカップルは一般的ではない。 彼らは自分たちが父や家族に受け入れられるか心配だった。 自宅に到着すると、アーミテージ家の人間は彼ら二人に理解を示し、逆に気持ち悪いくらい歓待してくれた。 アーミテージ家の二人の黒人使用人がいた。 彼らの仕草や立ち振舞を見ていると、クリスには挙動不審に見えて気味が悪かった。 慣れない環境下、若干の違和感を感じていたクリスは、その晩寝付けなかった。 外の空気を吸おうと館の外に出てみると、クリスは深夜にすごい勢いでジョギングをする使用人に遭遇した。 部屋に戻ると1Fではまだローズの母、ミッシーが起きていた。 彼は勧められるままにミッシーの催眠術にかけられてしまう。 意識の奥底に自らが閉じ込められるイメージを見ていた。 が、次の瞬間、気づいたら翌朝ベッドで目を覚ます自分がいた。 翌日は、アーミテージ家でローズの父、ディーンの知り合いを集めたパーティが行われた。 パーティでのゲストは白人の富裕層ばかりで、クリスは居心地が悪かった。 しかし、ゲストの中に1人だけローガンという黒人男性がいた。 クリスは、ローガンに話しかけたが、その黒人らしからぬ立ち振舞いに不信感をおぼえた。 パーティで特にクリスに話しかけてきたのは、盲目の美術商、ジム・ハドソンだった。 元カメラマンだったジムは、才能の限界を感じてから画廊オーナーとなったのだが、そこで彼は失明してしまったのだという。 ジムは、前からクリスの作品を高く評価していたのだった。 パーティが終盤になると、ある事件が起こった。 ローガンをスマホで撮影しようとした時、誤作動したフラッシュに過剰反応したローガンが、取り乱してクリスに襲いかかってきたのだ。 クリスは、混乱してその場をローズと離れた。 しかし、クリスが離れている間、恐るべきことが起こっていた。 なんとディーンは、ビンゴ大会を装い、クリスを人身売買のオークションにかけていたのだった。 競り落としたのは、盲目の美術商・ジムだった。 気味が悪くなったクリスは、パーティが終わると、ローズを促して帰ろうとしたが、ローズはクリスに車のキーを渡そうとしなかった。 そしてクリスは催眠術によって眠らされてしまい、地下室に監禁されてしまった。 クリスが地下室で目覚めると、彼はようやく何が起こっていたのかを理解した。 ローズも含め、アーミテージ家によって彼は人身売買の材料として誘拐されたのだ。 両手を縛られ、ソファに座らされたクリスには、とんでもない運命が待ち受けていたのだった・・・。 果たしてクリスは、絶体絶命のこの窮地を脱出することができるのかーーー。 スポンサーリンク 4.映画内容の簡単なレビュー!(ネタバレあり感想・評価) 徹底的に練り込まれた脚本・演出!見逃していいシーンは1つもなし! 本作は、まず純粋にストーリーそのものが面白いです。 序盤~中盤こそ、いわゆる低予算系脱出・脱獄ホラー映画に典型的な展開で進みます。 すなわち、許嫁のローズと結婚前の挨拶にアーミテージ家を訪れた黒人の主人公・クリスが、アーミテージ家で様々な不可解な出来事に遭遇するうち、囚われの身になっていくという展開ですね。 笑いながら泣く!怖すぎる使用人ジョージナ 引用: 中盤までは、主人公クリスが、アーミテージ家のメンバーや、そのゲスト達の言動の異常性を目の当たりにするたび、鑑賞者である我々もなんとなくゾクゾクッとする薄ら寒さを感じ・・・といった感じで、ホラー映画らしい気味の悪さが積み重なっていきます。 いわゆるサイコパスに追い詰められる、密室モノ猟奇殺人系なのかな・・・?と思って見ていると、終盤の入り口に差し掛かったあたりからがすごかった!ここから、意外性あふれる怒涛の展開へ進んでいくんです。 実は、許嫁のローズも含め、 アーミテージ家のメンバーは家族ぐるみで伝統的に黒人の拉致誘拐・人身売買に手を染めており、希望する富裕層の白人に対して、違法な脳移植手術を行っていたのですね。 何という展開・・・。 敢えて他作品と比較するならば、 僕が感じたこの作品の「怖さ」とは、よくある陰謀論などで紹介される、白人エリート層の秘密結社的な気持ち悪さなんですよね。 お金も名誉も満たされた、富裕層の白人が最後に「不老長寿」「永遠の命」を獲得しようとして、誰も見てない秘密の会合で、非人道的・非倫理的な行為に手を染める。 その倒錯した価値観に染まった大人たちは、おぞましくて、ぞくぞくするような怖さがありました。 そして、絶体絶命のところまで追い詰められたクリス。 いよいよやられちゃってバッドエンドを迎えるのか?!と鑑賞者が絶望しかけた時、クリスの反撃が始まります。 クリスは、知恵と機転を使って拘束を解き、アーミテージ家の人間を一人ずつ容赦なくぶっ潰して、家を出ていきます。 最後、クリスの怒涛の反撃がケレン味たっぷりで爽快! 引用: このラストシーンの胸のすくような描写は、まさに爽快! アーミテージ家の人間が「野獣」と彼を評したように、彼の眠っていた獣性が解き放たれたような大暴れは、ケレン味たっぷりでスカッとする展開でもありました。 このように、最初から最後まで、とにかくあらゆる場面で画面にぐぐっと引きつけられるような、そんな面白さがある作品でした。 現代まで続く「黒人差別」を丁寧に、歴史的観点も織り交ぜて描いた 本作が優れているのは、練り込まれた脚本に加え、1本「黒人差別」という筋の通ったテーマ性がしっかり設定されていることです。 作品の中で重層的に、執拗に繰り返し繰り返し表現されているのです。 ただ単に、現代のアメリカ社会での「黒人差別意識」をトレースしているだけにとどまらず、 きっちりと歴史的な文脈を踏まえ、「黒人差別の歴史」も随所で表現しようと試みているのが凄いのです。 引用: 例えば、ローズの母親ミッシーがクリスを催眠術にかける時に使ったアイテム 「紅茶」や地下室に拘束されたクリスが破れたアームレストの中から掴んだ 「綿花」。 両者とも、 長年、白人がプランテーション農業において、奴隷労働を強いてきた作物の代表格であり、アメリカ有史以来の「黒人差別」の歴史をさらっと踏まえたメタファーが試みられています。 さらに、アーミテージ家を訪問したクリスがテラスで振る舞われた 「アイスティ」。 白ワインとかコーヒーとかじゃなくて、あれっ、なんだろうこの飲み物?とか思いませんでしたか? 調べてみると、アメリカ南部では、特にシロップを沢山入れて味わうので「スイートティー」とも呼ばれるこの飲み物は、19世紀からアメリカ南部の白人家庭で伝統的に飲まれてきたアメリカ人のソウルフードの一つなのだそうです。 しかし、本作では、同時に黒人奴隷たちが彼らの農場やキッチンで働かされていた時代をも強く想起させる演出として見事な効果を発揮していました。 このように、 映画全体のストーリーにとどまらず、各場面の演出や各キャラクターの立ち振舞ひとつひとつに至るまで、アメリカにおける黒人差別を徹底的に描き出した細やかさには舌を巻かされました。 1度見て終わらすな!2度目の鑑賞からが本当に面白い! そして、この作品は、1回で終わりにせず、是非2周目以降のリピートを強くおすすめしたいのです。 一度ストーリーの全容を把握した後、もう一度最初から各キャラクターの何気ない仕草やセリフ、服装などをよーく観察してみて下さい。 もう、登場人物の一挙手一投足に、 「ああ、、そういう意味があったのか!」と符に落ちますので。 たとえば、いくつか例を挙げてみましょう。 まず、序盤のシーンから。 アーミテージ家へ向かう道中、車を運転するのはクリスではなく、恋人、ローズでした。 これって、違和感を感じませんでしたか? 引用: クリスも、ラストシーンで車の免許は普通に持っているのですが、敢えて、ローズが運転するのですね。 それは、クリスがアーミテージ家にとって「出荷前の商品」だからなのです。 オークションを前に、商品価値を落としたくない。 だから、ローズが大事に運ぶのです。 また、アーミテージ家の家族たちが、クリスに執拗に禁煙を迫るのも同じ理屈ですよね。 あるいは、アーミテージ家でクリスが出会う奇妙な黒人たち。 彼らは、全員白人の脳を移植手術されているのですが、その証拠に、彼らは全員帽子かかつらをかぶっているのです。 つまり、手術痕の残る地肌を見えないように巧みに隠しているのですよね。 ・・・なるほど!と思いました。 引用: さらに面白かったのは、アーミテージ家へやってきたゲストたちの服装です。 この時、ローズも含め、クリス以外は全員、服装や持ち物のどこかしらに「赤」が入っています。 これに対して、クリスだけが「青」系の服装なのですね。 そう言えばアメリカの2大政党も白人支持者の多い共和党のテーマカラーは「赤」で、黒人支持者の多い民主党のテーマカラーは「青」でした。 こうしたところにさらっと政治的なスタンスも入れてきているのがまた面白いです。 その他、映画の隅から隅まで本当に仕掛けが多く、演出やストーリーに多重的な意味やメタファーが仕掛けられていることに気づきます。 本当に初監督作品なの?と思えるほど、読み解き甲斐のある作品でした。 是非、みなさんも探してみてくださいね。 内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。 予めご了承下さい。 また、疑問点をまとめるにあたり、東宝東和から公式動画として提供されている、評論家・町山智浩さんの試写会トークセッションが非常に役立ちました。 ネタバレを含む、非常に納得感のある解説が聞けます、まずはこちらを是非チェックしてみて下さい! 疑問点1:タイトル「ゲット・アウト」の意味とは 引用: 直訳すると 「Get Out」とは「逃げ出せ!」という意味ですね。 劇中でも、ストーリー中盤、アーミテージ家への唯一の黒人の招待者、 ローガンが錯乱状態になった時、クリスに向かって「ゲットアウト!」と叫ぶセリフでも強調されていますね。 直接的には、文字通り、アーミテージ家に囚われたクリスが、屋敷から脱出するストーリーそのものを直接表現していると思われます。 さらに深読みすると、人種差別意識が強いアメリカ社会そのものから、「脱出して自由になりたい!」という黒人の悲痛な叫びである、と取ることもできますね。 疑問点2:主人公、クリスの職業は? クリスの職業は、プロのカメラマンです。 映画中、キャノンの高級デジタル一眼レフを肌身離さず持ち歩く様子からもよくわかりますね。 クリスを競り落としたハドソン画廊のオーナーも、クリスの作風を 「力強く、残忍で物悲しいイメージ」と高く評価していましたね。 恐らく、幼少時に母親と生き別れた強烈な原体験が、彼の芸術性を支えているのでしょう・・・。 疑問点3:ローガンの正体とは? 引用: アーミテージ家のパーティで出会った、いわゆる黒人らしからぬ振る舞いをするローガン。 クリスの「黒人特有の」グータッチに対して、普通に握手で返す不自然さ。 クリスが挨拶した時、彼は老婦人の物静かな年老いた夫という感じの立ち振舞でしたね。 しかし、クリスが写メを撮った時、切り忘れていたフラッシュを浴びると、錯乱状態になり、クリスに襲いかかってきました。 引用: 彼の正体は、少し前に行方不明となっていたアンドレ・ヘイワースでした。 ローガンの写メを見たロッドが、暫く前に失踪した知り合いに似ていると考え、ネットで調べた結果判明します。 つまり、彼もまたローズのハニートラップにかかり、アーミテージ家で白人たちの顧客に売り飛ばされていたのですね。 疑問点4:アーミテージ家の正体とは? 引用: アーミテージ家は、「知能」や「体力」に優れた黒人を誘拐し、ローズの祖父が編み出した「凝固法」という脳外科手術のメソッドを活用し、「白人」の顧客たちの脳を移植する、違法な人身売買ビジネスを家族ぐるみで行っていました。 その役割分担とは、以下の通りです。 娘(ローズ):誘拐担当 色仕掛けでターゲットに近づき、結婚詐欺で黒人男性を自宅へと招き入れる。 非常時は、逃げ出そうとするターゲットを、猟銃で仕留めるスナイパーの役割も務める 息子(ジェレミー):誘拐担当 柔術でターゲットを締め上げ、意識を失わせて誘拐し、自宅へと引き入れる。 また、父親の実施する脳移植手術のアシスタントを務める。 母親(ミッシー):催眠術担当 心理療法士で、催眠術を得意とする。 本作では、夜に眠れないクリスを誘い出し、紅茶のカップを繰り返しかき混ぜる音と動作で、催眠状態へと誘導した。 父親(ディーン):オークション・手術担当 顧客を集め、ビンゴ大会を偽装したクリスの人身売買オークションを実施。 また、実際の脳移植手術を実施する担当でもある。 疑問点5:クリスを競り落とした老人の正体とは? 引用:映画「ゲット・アウト」DVD本編映像より クリスを競り落とした老人は、ハドソン画廊のオーナー、ジム・ハドソンです。 彼は、失明する前、野外専門のカメラマンとして活動していました。 しかし才能の限界を感じ、美術商に転じたのでした。 そこで成功を収めたのですが、皮肉なことに今度は失明してしまったのです。 そこで、ジムは自らが失った「視力」とクリスの世界を捉える独特のセンスを自らのものにしたいため、彼を宿主にしたいと願い、クリスをオークションで競り落としたのでした。 疑問点6:クリスはなぜ洗脳を解き、脱出することができたのか? 引用:映画「ゲット・アウト」DVD本編映像より 映画を注意深く見ているとわかるのですが、地下室で催眠状態から一旦覚めた クリスは、夢中でアームレストにしがみついているうちに、アームレストを覆う毛皮が破れ、中からクッション材としての「綿花」が出てきていることに気づいたのです。 これを両耳に詰めることによって、クリスは、ローズの母ミッシーが仕掛ける、 紅茶のカップをかき混ぜる音を遮断することで、 これ以上催眠術にかからないようにしたのですね。 ちなみに、彼は敵を油断させるため、ジェレミーが室内に入ってくるまでの間、わざと催眠にかかったふりをして目を閉じていました。 疑問点7:「鹿」は何のメタファーだったのか? 引用: 本作で、「鹿」は3度象徴的な登場をします。 1回目は、アーミテージ家へ向かう道中で誤ってハネてしまった「死体」として。 2回目は、地下室の壁に掛けられたオスの剥製との対面。 そして、3回目はその剥製を「武器」として使って、ディーンを倒すシーンです。 この「鹿」には重層的にメタファーがかけられていると見ることができます。 1つは、「鹿」=「黒人」という見立てです。 歴史的に黒人は搾取され、痛めつけられてきました。 現在は、美しい鹿の剥製のように、表面上は人種差別は「なくなった」ように繕われていますが、実際はまだまだ人々の心の中に根強く差別意識は残っていますよね。 クリスが剥製を使ってディーンを殺すシーンは、そんな現状に対して、黒人たちの怒りが爆発しているのだ、と見ることもできますね。 もう1つは、「鹿」=「クリス」と見ることもできますよね。 すなわち、鹿が画面に登場するシーンと、クリスのたどる運命が連動しているのです。 アーミテージ家へ向かう途中で殺された死体は、クリスの運命を暗示しているようですし、地下室の剥製は、このあとクリスが白人の脳を移植手術され、たんなる入れ物になろうとしていることを暗示しています。 そして、最後に剥製のツノがディーンを倒すシーンは、このあとクリスがアーミテージ家を全員やっつけることを暗示しているのですね。 疑問点8:クリスが脱出する車の中、助手席に置いてあった「仮面」とは何の意味があったのか? この鉄仮面は、ローズの弟、ジェレミーが誘拐する時に、顔を隠すため使用していた「誘拐用の道具」ですね。 映画冒頭で、閑静な白人居住地域に紛れ込んでしまったある黒人男性が、車から下りてきた仮面をかぶった男に誘拐されるシーンがありましたが、この仮面の男こそがジェレミーだったのです。 また、よく見ると、このクリスが脱出に使った白い車も、映画冒頭で映し出される白い車と一致しています。 映画ラストシーン近くになって、一見、本編とは関係のなさそうに見えた映画序盤で男が襲われるシーンと本編のつながりをワンショットで鑑賞者に悟らせるという、非常にクレバーな演出でした。 疑問点9:ラストシーン・結末の考察 拘束されていた古椅子のアームレストのクッション材として使われていた綿花を耳に詰めることで、ミッシーの催眠術を回避した クリスは、ジェレミー、ミッシー、ディーンと、アーミテージ家のメンバーを次々倒し、外に止めてあった白いスポーツカーで屋敷を脱出しようとします。 引用: そして追いすがってきた男性の使用人(=祖父)をカメラのフラッシュで錯乱状態に追い込み自殺させると、最後は猟銃を手に追ってきたローズを倒したところで、 親友のロッドが迎えに来てくれたところで、映画は幕を閉じます。 ジェレミーが柔術で襲いかかってきたり、実はジェレミーこそが、冒頭で登場した高級住宅街での誘拐犯であることが判明する仕掛けが用意されていたりと、ラストシーンにも見どころが満載。 引用: そして、よく見るとローズもラストシーンだけ髪型が違うんですよね。 クリスの恋人モードだった時は、髪を下ろして女性らしさを全面に出していましたが、 ラストシーンでは猟銃を手にオールバックの出で立ちで完全に戦闘モード。 狂気が宿った目つきが怖かったです。 ローズをしめ殺して、アーミテージ家全員を倒した直後にクリスの前に現れた警察車両を見て、一瞬「ここで逮捕されてしまうのか、きついな・・・」と思ったら、車からは親友のロッドが下りてくるラストショットも、最後までハラハラさせてくれる演出で秀逸でした。 疑問点10:もう一つのエンディングとは すでに発売されているDVD・ブルーレイといった円盤には収録されているのですが、 本作には陽の目を見なかったアナザー・エンディングがあります。 そのエンディングとは、クリスが最後にローズをアーミテージ家の屋敷近くの路上で殺して、車で立ち去ろうとするまさにその時、親友・ロッドではなく、警察が現れてクリスを逮捕してしまうという筋立てです。 その後、クリスは収監され、半年後にロッドと面会をするシーンで静かに終わっていくバッドエンドとなります。 ジョーダン・ピール監督によると、敢えて精神的に堪えるバッドエンドにすることで、 「未だに黒人差別は存在しているのだ」ということを強烈に観客へと印象づけたかったとのこと。 ただし、このエンディングだとあまりに救いがないので、採用を見送ったのだとか。 疑問点11:続編はあるの? 当初は本作はこれで完結と思われていました。 しかし、2018年2月、アメリカの各種Webメディアで、「ジョーダン・ピール監督自身が続編制作へ前向き」と一斉に報道がありました。 ただ、現状ではアイデアや構想、スケジュール等は全く決まっていません。 単に「前向き」「やりたい」と監督自身が表明した段階です。 現在、ジョーダン・ピール監督は、ユニバーサル・ピクチャーズと契約し、2019年上半期に公開予定の別の2作目(タイトル、内容不明)を撮影中とのこと。 だから、もし「ゲットアウト2」または、「ゲットアウトユニバース」みたいなものが実現するとしても、当面先の展開になるのでしょうね。 これだけの練り込んだオリジナルコンテンツを作れる力量のある監督なので、いくらでも話は広がっていくと思います。 映画でもドラマでもいいので、是非もう少しこの世界観でのお話を見てみたい気もしますね。 7.まとめ 映画「ゲットアウト」は、日本で劇場上映された時はそれほど話題になりませんでしたが、 低予算のインディーズ作品ながら、脚本・演出とも非常によく練り込まれた素晴らしい作品でした。 良い作品は、2回目、3回目と見返すと、さらにじわじわと面白さが染み渡るように体感できるといいますが、本作はまさにそういった「スルメ作品」の代表格。 僕も、何度も何度も手元で確認するたび、ディテール描写や精巧に仕掛けられたメタファーの数々に嘆息させられました。 おすすめなので、是非何度も見返してみてくださいね。 それではまた。 かるび 8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など 「ゲットアウト」DVD・ブルーレイ.

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